レビュー・映画 『ドリーマーズ』


2003年公開、イギリス・フランス・イタリア制作。監督はベルナルド・ベルトルッチ。主演はマイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル。2003年ヴェネツィア国際映画祭のプレミア上映作品。

映画は節操なく思いついたものを何でも観てしまい、特にこれといった趣向も主義もないのだけど(読書もそうだけど)、唯一、好きな映画監督をあげるとしたら、ベルトルッチかもしれない。一番好きなのは『シェルタリング・スカイ』で、映画作品から入って、ポール・ボウルズの原作も2、3度読み直した。『暗殺の森』や『ラスト・タンゴ・イン・パリ』など昔の作品も好きだが、『魅せられて』や『シャンドライの恋』などは、嫌いではないがさすがに早熟の天才監督の勢いも少し衰えたなあ、という感じで、そのままこの『ドリーマーズ』を観忘れていた。昨年亡くなったこの巨匠を偲んで、そう言えば観忘れていたこの作品を観てみた。

この映画のレビューは『寄り道カフェ』というブログのレビューがとても良かったので、映画に詳しくない私のレビューよりはこちらが参考になるかもしれない。(ただし、こちらのブログはもう終了しているようなので、いつリンクが切れるか分からないのはご了承ください。)

フランスの1968年「五月革命」を舞台にした青春映画。映画狂のアメリカ人留学生マシューが、やはり映画狂の双子姉弟のイザベルとテオに出会う。近親相姦的関係にあるイザベルとテオ、そして彼らに魅せられたマシューとの危うい三角関係。はけ口を求めて鬱屈する青春のエネルギー。いわば、これは、日本でも同時期に起こっていた「学生紛争」に参加する若者たちの青臭い青春を描いたものなのである。ただ、日本の学生紛争だとただただ泥臭くなってしまうのに、パリの魔法とベルトルッチの演出にかかると、それがこんなにもスタイリッシュにオサレな映像になってしまうからすごい。マイケル・ピットの真っ当な若々しい美しさ、エヴァ・グリーンのカッコいいファッションにエキセントリックな美しさ、そして、ルイ・ガレルの繊細で危うげな美しさ、とにかくこの3人の美しさに惹きつけられて画面から目が離せない。

ベルトルッチの安定した映像美に加えて、この映画の見どころはなんと言っても、3人の映画狂が繰り広げる会話や映画クイズなどを通して、随所にハリウッドやルーヴェルバーグの名作へのオマージュが散りばめられているところだ。

最も印象的なのは、ゴダールの『はなればなれに』のルーブル美術館を駆け抜けるシーンを再現する、というところ。そもそも、エヴァ・グリーンのファッションや表情など、アンナ・カリーナを強く意識している。ヌーヴェルバーグに大きく影響を受けたベルトルッチなので、ゴダールの『勝手にしやがれ』、トリュフォーの『突然炎のごとく』などはもちろんのこと、サミュエル・フラーの『ショック集団』やロベール・フレッソンの『少女ムシェット』、古典的ギャング映画の『暗黒街の顔役』、チャップリンの『街の灯』にバスター・キートンの『キートンのカメラマン』、『フリークス』に『トップ・ハット』と、とにかく幅広くそして微妙にマニアな名作が登場する。個人的に面白かったのは、結構最近観たグレタ・ガルボ主演の『クリスチナ女王』が出てきたところだ。グレタ・ガルボ演じるクリスチナ女王が、ジョン・ギルバート扮するアントニオと甘い逃避行の最後に別れを告げるシーン。このマニアックさが分かる人が今の日本にどれだけいるだろう。(意外とたくさんいる、ということが、SNSをやると実感できて面白いのだが笑)

かなり刺激的なアブノーマルなエロス漂うシーンも多く、退廃的な匂いがある作品なので、好き嫌いは分かれる作品だとは思うが、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』が好きな方は楽しめるのではないか。と言うか、この作品自体が、映画の名作・名匠へのオマージュであると共に、自身の記念碑的作品である『ラスト・タンゴ・イン・パリ』をなぞるような仕上がりになっていて、何というか、いろんな映画の重複的な入れ子構造のようになっているのも、映画マニアにはたまらないところだろう。

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