名言・名文・名句 『デッドエンドの思い出』


きゅうと追い詰められたような気持ちは抜けていなかった。それでも「今しかない、今から目をそらしたら悲しくなってしまうから」とせっぱつまっているこの日々は、どうしてだか、まさにそれゆえに奇妙に幸せだった。私はすでに自分でもそれを感じていた。何を見ても悲しく見えるけれど、ついこの間までの生殺しみたいなはっきりとしない日々と比べれば、その鋭い悲しみに貫かれたこの世界はずいぶん冴え冴えとして見えていた。

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