おすすめ絵本32 『しろいうさぎとくろいうさぎ』


しろいうさぎとくろいうさぎ』

文・絵:ガース・ウィリアムズ  訳:まつおかきょうこ

出版社:福音館書店

個人的に一番好きなとっておきの絵本です。絵の美しさ,うさぎの可愛いらしさ,文章,ストーリー何度も読んでいろんな角度から味わいたい絵本

《概要》

しろいうさぎとくろいうさぎは二匹で楽しく暮らしています。ある日、いつものようにうまとびしたり、ひなぎくとびをしたり、かくれんぼをしたり、楽しく過ごしている最中、くろいうさぎだけが何か考え込んでいて元気がありません。しろいうさぎがどうしたの?と聞くと、やっとくろいうさぎは答えます。「いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますように」そんなこと考えたことのなかったしろいうさぎはびっくり!でも、しろいうさぎだって気持ちは一緒なんです。

《おすすめタイプ》

絵を中心に楽しむなら3歳くらいから。読み聞かせで内容を楽しむには4、5歳くらい。自分で読めるようになってから読む本としてもおすすめです。

《おすすめポイント》

今までおすすめ絵本を紹介してきたのも30冊を超えました。紹介したものはどれも本当に大好きなものばかりなのですが,私が本当に一番大好きな絵本はどれかと言われれば、これです。

全国学校図書館協議会や日本図書館協会はもちろん,いろんなところから選定図書として選ばれている定番中の定番です。今まで敢えて紹介してこなかったのは、母親になってから読み聞かせる、という観点から選んだのではなくて、本当に私が子供の頃に一番好きだった絵本だから。でも、やっぱりいいものはいいし、親になった目で読み返しても素敵だな、と思うので紹介することにしました。

何が大好きだったかって、とにかく絵です。もう二匹のうさぎが可愛いのなんのって、子供心にもそれが強く印象に残っています。ぬいぐるみや動物好きな子どもであれば、それだけでとっかかりには十分なのではないでしょうか。目をまん丸くした時の表情、くろいうさぎの考え込んでいる様子、二匹で楽しく遊んでいる姿。うさぎのふわふわした毛、淡い色調で描かれた森や原っぱ、遠景と近景、可愛らしさとリアリティが絶妙にミックスされていて、どのページを切り取っても素晴らしいの一言。

どうしてこの絵がこんなに好きなのかは分かりません。小さい頃一番大好きだったこの絵本の絵を描いていたガース・ウィリアムズが、私の読書好きの大元となったローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』(福音館文庫版)の挿絵を描いていたのだ、と知ったのはずっと後のことです。もちろん、ワイルダーの文章と恩地三保子さんの翻訳が素晴らしかったから夢中になって読んだのだけれど、潜在的にガース・ウィリアムズの挿絵も影響していたのかな、なんて思いました。

個人的に絵のことばかりになりましたが、もちろん、文章もお話もとても良いのです。大人になってから読んでみると、全てのセリフに「くろいうさぎはいいました」とか「しろいうさぎはききました」といった文章がついていて、小さな子どもにも分かりやすい、ゆるやかなテンポで話が進んでいくのも良いなあ、と気づきました。

少しまどろっこしいくらいですが、いつもの遊びと暮らしを一つ一つなぞりながら、そのたびに考え込んでしまうくろいうさぎの様子が、子どもの心に少しずつ刻まれていくんですよね。いつもの暮らしがとても充実して楽しければ楽しいほど、「ずっとこのままいれるんだろうか」「この幸せを失いたくない」と不安になってしまう、そんな複雑な心理も実によく表しているなあ、と感心してしまいます。

「ひなぎくとび」「クローバーくぐり」「きんぽうけ」「どんぐりさがし」といった言葉、「あさのひかりのなかへ、とびだしていきました」「しろいうさぎは、やわらかなしろいてをさしのべました」といった少し古風な美しい言い回しも素敵です。

それから、今になって読んでみると、「けっこんしてしあわせにくらしました」というおとぎ話の典型的要素に、ジェンダー色が全く感じられないのも魅力のひとつだと思います。日本語訳だと、どうしても一人称の関係から」くろいうさぎ=僕=男の子」「しろいうさぎ=わたし=女の子」という図式が透けて見えますが、元々の英語「I」だけだったら、どちらがオスとかメスとか、全く分からないですよね。結婚しても二匹は一緒にたんぽぽを食べたり、ひなぎくとびをしたりして楽しく暮らすだけ。そこに妙なジェンダー的役割分担は介在しません。大好きなパートナーと一緒にいつまでもいたい、その気持ちがあるだけ。そのシンプルさが、実はとても貴重だな、と思うのです。

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