おすすめ絵本35 『ちょっとだけ』


ちょっとだけ

作:瀧村有子 絵:鈴木永子 出版社:福音館書店

お兄ちゃんお姉ちゃんになるのは、小さい子供にとって最大の心理的ドラマ。その気持ちに寄り添った、子どももお母さんも優しい気持ちになれる絵本。

《概要》

なっちゃんのおうちに、あかちゃんがやってきました。ママのスカートを「ちょっとだけ」つまんで、牛乳をコップにひとりで入れるのも「ちょっとだけ」成功して、ママが押してくれなくても自分でブランコを「ちょっとだけ」揺らして、、なっちゃんはちょっとずつ頑張って「おねえちゃん」になっていきます。でも、眠たくなっちゃった時には、どうしてもママに甘えたくなっちゃう。なっちゃんはママに「ちょっとだけ」抱っこして、と頼みます、、

《おすすめタイプ》

読んであげるなら3歳くらいから。ただ、下のおすすめポイントでも説明するように、下の子ができたばかりの頃よりも、6歳以降など、上の子が少し大きくなってから読むのがおすすめです。

《おすすめポイント》

『ピーターのいす』の記事で書いた通り、小さな子供にとって、下の弟や妹が生まれる、というのは短い人生で最大の出来事です。我が家では、上の娘と下の息子は2歳半差。ちょうど弟が生まれたばかりの頃、里帰りしていた実家の近くの美容院に娘を連れて行きました。イヤイヤ絶頂期できかんきの顔をして不機嫌にしていた娘に、5人の子供を産んだママさんが何気なく「おやおや、人生最初の試練ってわけね」と言い聞かせていたのが印象的でした。弟や妹ができて嬉しい気持ち、今まで独り占めしていたパパやママを取られてしまう気持ち、おねえちゃんやお兄ちゃんになったんだという誇らしい気持ち、いろんな感情が交錯して複雑な時ですね。

この絵本では、主人公のなっちゃんが、赤ちゃんのお世話が忙しくてかまってもらえない間に、色んなことを「ちょっとだけ」自分でやってみる、というストーリーです。我慢の連続でかわいそうなくらいなのですが、最後の最後で、「ちょっただけだっこして」と甘えてしまうなっちゃんですが、「ちょっとだけじゃなくていっぱいだっこしたいんだけどいいですか?」と言うママの言葉に救われます。

ブログの記事を書くにあたり、この絵本の情報をグーグルで検索していると「ちょっとだけ 絵本 嫌い」とかいうキーワードが上位に出てきて、おや、と思いました。検索記事を覗いて見ると、「母親が子供に我慢をさせ過ぎていて嫌だ」とか「上の子にこの絵本を読んであげると嫌がる」などといったコメントが出てきます。確かに、この絵本のなっちゃんは、初めからずいぶんいい子にしていますし、現代の感覚からすると、小さな子供に自分で牛乳を注がせたり、公園に一人で行かせたり、赤ちゃんがいるからってほったらかしすぎでは?と思えるところもあるかもしれません。ただでさえ複雑で微妙な時期にこの絵本を読み聞かせられたら、「なっちゃんみたいに我慢しなさい」という親からの押し付けのように感じられてしまう子もいるかもしれません。

実は、我が家も、この絵本はだいぶ前に買ってあったのですが、上の子の反応もイマイチだったので、しばらく放置してありました。私も、良いお話だとは思うけれど、子どもが読みたがらない絵本を読んでも仕方ないと思ってそのままにしていました。ところが、それからもう何年も経ったある日、寝る前の読み聞かせで小学校2年生になった娘が選んだ本がこれだったのです。選んだ時には、娘も「あ、こんなのあったけど読んでないな」と軽い気持ちだったのだと思いますが、読んで聞かせていると、ちょっと様子がおかしい。なんだか、目のあたりをゴシゴシ擦っています。えー、もしかして泣いてる!?と内心びっくりしましたが、そうっとしておきました。

読み終わってから「弟とかさー妹とかさーいると大変なんだよ!」と娘がポツリ。「そうだよね、お兄ちゃんお姉ちゃんは大変なんだよね」と頷きました。上の娘は母性愛というのか、義侠心というのか、小さい頃から弟を可愛がったり庇ってあげたりする気持ちが強くて、兄弟喧嘩で苦労したこともあまり無いし、下の息子に至っては、マザコンよりもシスコンを心配するほどお姉ちゃん好きなので、「なるほど、これが一姫二太郎の良さか」などと、母は都合よく解釈していたのですが、やっぱりそれなりに上の子は我慢していたんですね(←当たり前)。

ちょうどこの絵本のなっちゃんと同じくらいの時には、まだ、自分の気持ちや立場が理解しきれていなかったのかもしれません。こうやって、もうずっと大きくなってから初めて、あの頃の複雑な気持ちが整理できたり、受け止めたりできる、ということもあるんだな、と思いました。

物語の力というのはとても大きくて、登場人物に代わって擬似体験することで、自分の気持ちが浄化される、という作用は大人にもあります。もし、お兄ちゃんお姉ちゃんになったばかりで気持ちが追いついていない時には、もう少し時間が経ってからこの本を読み聞かせてあげる、というのも良いと思います。

色々思い出したお姉ちゃんをよそに、マイペースであくびなんかして聞いている弟くんには、「お姉ちゃんはこんなに大変だったんだよ」と言い聞かせましたけど、少しは響いているのかしら、、、

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