レビュー・映画 『バグジー』

1991年公開、アメリカ。監督は『レインマン』でアカデミー監督賞を受賞したバリー・レヴィンソン。第64回アカデミー美術賞と衣裳デザイン賞を受賞したほか、ゴールデングローブ作品賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞などを受賞。音楽に『ニュー・シネマ・パラダイス』や『アンタッチャブル』などを数々の名作を手がけた映画音楽家のエンニオ・モリコーネ、撮影に『ET』などでアカデミー撮影賞に何度もノミネートされているアレン・ダヴィオーを起用するなど、制作の細部までこだわりが見える。

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書評・小説 『満州国演義三 群狼の舞』『満州国演義四 炎の回廊』 船戸 与一

船戸与一の遺作『満州国演義』シリーズの第3巻と第4巻。第3巻では、満州国成立後、高まる国内の不満を背景に軍部の力は増大し、五・一五事件、やがて熱河侵攻へと昇華していく。第4巻では、中国人や朝鮮人らの抗日戦が続く中、満州を巡って国際情勢は複雑化していき、内地ではついに二二六事件が起こり、日本人が新たな戦争への道を確実に歩み始めるまでが描かれる。 続きを読む


レビュー・映画 『4ヶ月、3週と2日』

2007年公開、ルーマニア制作。監督は、クリスティアン・ムンジウ。チャウシェスク大統領独裁政権末期のルーマニアで、一人の女子大生が、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶手術を手助けする一日を描いた物語。第60回カンヌ映画祭で、並み居る有名監督の作品を押さえて、パルム・ドール賞に選ばれたことで一躍話題になり、ヨーロッパ映画賞、全米映画批評家賞など数々の賞を受賞した。

レビュー・小説 『夏に抱かれて』 フランソワズ・サガン

サガンの小説は、中高生の頃一通り読んだのだが、『心の青あ』以降の後期の作品は、急速にサガンらしい魅力を失っているように感じて、あまり好きになれなかった。

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レビュー・映画 『危険な関係』(1959年)

1959年フランス制作。監督は、ロジェ・ヴァディム。出演、ジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ、アネット・ヴァディム。

18世紀フランス宮廷の恋愛ゲームを描いた、ラクロの『危険な関係』を原作とした作品。同名の作品を、1988年にスティーブン・フリアーズ監督が制作している。もともとこのフリアーズの方の作品を高校生の頃に観て、すごくハマってしまい、ラクロの原作も取り寄せて読んだ記憶がある。
原作は、貞淑な仮面をかぶっていながら、実は非情な恋愛ゲームの達人であるメルトイユ侯爵夫人と、社交界でも名うてのプレイボーイであるヴァルモン子爵の2人が、策略をめぐらし、若い純情な生娘セシルをたぶらかしたり、真実に貞淑な法院長夫人をあの手この手を使って陥落させたり。最後には、仲間割れを起こし、策士策におぼれる感じで、二人とも自滅していく。書簡スタイルの作品になっていて、人物たちの視点が色々変わってストーリーが展開していくところも面白く、古い作品ながら、エンターテイメント性十分の作品である。
フリアーズ作品の方は、時代も登場人物も、原作に忠実。メルトイユ侯爵夫人を、『危険な情事』でコワ~イ演技を見せたグレン・クロース、ヴァルモン子爵を、ジョン・マルコビッチが演じている。(ちなみに、セシル役として若きウィノナ・ライダーも出演)
作品自体よくできているし、演技派俳優たちの演技が見物で、私は好きだったのだが、今思うと、若干キャスティングに無理があるかな・・・社交界の花形夫人にはグレン・クロースはちょっと強面過ぎるし、私が好きな名優ジョン・マルコビッチも、次々と女性が手中に落ちてしまうほどの美男子プレイボーイというタイプでは正直(いやいや全く)無い。
一方、ヴァディムの『危険な関係』は、時代設定を1950年代のパリに置き換えた作品なのだが、今回改めて観てみると、キャスティングはこちらに軍配があがりそうだ。メルトイユ夫人にあたる女性ジュリエットをジャンヌ・モロー、ヴァルモン子爵にあたる男性ヴァルモン氏をジェラール・フィリップが演じ、二人は夫婦という設定になっている。
ジャンヌ・モローは大好きな女優で、古い映画をよく観ていた高校生の頃、トリュフォーの『突然炎のごとくに』やルイ・マルの『恋人たち』などをせっせとレンタルビデオで借りてきて観ていた。

しかし、もともと私はフランス映画がなぜか余り性に合わず、しかもお子様過ぎて映画の良さが全くわからなかったので、はっきり言って観ているのが苦痛なくらいつまらなく、それでもジャンヌ・モローを観たいだけのため、眠い目をこすって深夜までビデオを観ていたのだ。あの隈のふかーく刻まれた目が素敵なのよね・・・力強さがあるのに、不幸そう、或いは絶対に不幸になるだろうと予感させる美人。そういう形容詞だと、やっぱり大好きな女優ヴィヴィアン・リーを思い出すが、ジャンヌ・モローはもっと擦れた、退廃的な魅力がある。

ジェラーヌ・フィリップも、観ているこっちが照れてしまうくらい、あまーい美男子っぷり。さらに、セシル役の若手女優や、当時監督の妻であり、貞淑な法院長夫人役を演じているアネット・ヴァディムの、輝くような体の美しさもうっとり。さすが、ブリジッッド・バルドーの夫であり、彼女を発掘したことで知られるロジェ・ヴァディム。胸なんか露出しなくても、きわどい映像に慣れきった21世紀の日本のワタクシが鼻血ブー(ふる!)になるくらい、エロティックで官能的な映像を見せてくれる。
特に、女性の脚が好きなようで・・・脚線美の見せ方がとってもお上手。ジャンヌ・モローが、ゴージャスな毛皮のコートを着て、ハイヒールを履いた脚をくみかえるだけでドキドキしてしまう。
フリアーズ作品は、二人の「恋愛ゲーム」っぷりにスポットがあてられいて、サスペンス的なハラハラドキドキ感が面白いのだが、ヴァディム作品は、主人公二人が夫婦という設定もあって、ヴァルモン氏とヴァルモン夫人の関係がもっと密度が高いものとして描かれ、だからこそ、どこか悲哀ある感じに仕上がっている。そういう悲哀と、戦後のパリの退廃的な雰囲気がよく描かれている逸品。流れているジャズ系の音楽もかっこよくて、今観てもとってもスタイリッシュ。
高校生の頃は、名優二人の緊張感のあるやりとりが見物のフリアーズ作品が良い!と思ったものだけど、今観るとヴァディム作品も素敵。時代を超えて、名監督たちに映画化したいと思わせる、、、ラクロの原作もそれだけ魅力的な作品なのだと思う。久しぶりにフリアーズのも借りてこようかな・・