名文、名句、引用一覧

名言・名句・名文 『項羽と劉邦』』 司馬 遼太郎

項羽は劉邦にくらべーーというより誰に対してもーーけたはずれに強い自己を持っていた。自己という呼称の生き物といってよく、なみ外れて多食し、その太い頸を多量に通過してゆく咀嚼物はすぐさま力になって欲望にかわった。・・・この炎のために、項羽は他人の心といううものが見えにくかった。このことは項羽に攻略や戦略という感覚を欠かせてしまったことと無縁ではない。さらにこのことは、馬を愛し、女を愛することにもつながった。その愛し方ははげしすぎるというよりも、自己の延長もしくは自己そのものとして愛しているようであった。


名言・名句・名文 『失われた横顔』 フランソワズ・サガン

私は夫を愛した、愛し方が足りなかった、愛しすぎた、うまく愛せなかった、と?私が答えることを拒否しないとしても、真実として何と答えたらいいのだろう。しかも、アランも認めるような真実を・・・。これが最悪の別れというものだろう。別れるだけでなく、それぞれ異なった理由で別れるということが。あんなにも幸せで、あんなにもからみ合い、あんなにも親密だったのに、現在では、ただ一つの真実とは、道に迷い、うつろな瞳で、砂漠の中で切断されることのない道を探すことなのだ。