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名言・名文・名句『TUGUMI』 吉本ばなな
海辺の町の雨は特別ひっそりと降る気がする。海が音を吸いとってしまうのだろうか。東京に住んでびっくりしたのは、雨がことさらざあざあ音をたてて降るような感じがすることだった。 『TUGUMI』 吉本ばなな -
名言・名文・名句 『TUGUMI』 吉本ばなな
生きている限りまたいつかこういう夜を感じることができると思うと、未来にも希望がもてる。こんな美しい夜。山々の気配と海の気配が町じゅうをゆっくりと透明に漂っているような美しい風の匂い。もう2度とないかもしれなくても、もしかしたらいつかの夏、... -
名言・名文・名句 『TUGUMI』 吉本ばなな
夏が来る。さあ、夏がはじまる。 必ず1回こっきりに通りすぎて、もう2度とないシーズン。そんなことよくわかった上できっといつも通りに行ってしまうだろう時間は、いつもより少しはりつめていて切ない。その時、夕方の部屋にすわって、私達はみんなその... -
名言・名文・名句 『ぐるりのこと』 梨木香歩
肌身が経験する、圧倒的なリアリティの中へ参加している、という感覚は、私にいつでも、未だかつて語られたことのない言葉を使いたい、と、強く欲求させる。そうでなくてどうしてこの、常に新しくあり続ける「今、この瞬間、この場所で」というリアリティ... -
名言・名文・名句 『ぐるりのこと』 梨木香歩
私は、どうやらノスタルジーというものは、群れの境界で、個としての自分がいつか帰る場所を思って感じるようなものではないか、そしてそれは単なる感傷以上のもの、また、理性とは違った働きで群れの暴走を食い止め得るもの、ではないかと思うようになっ...