キリスト教一覧

書評 『バロックの光と闇』 高階 秀爾 ②

バロックを反「古典主義的なもの」と定義し、その対比から特質を捉えることは《便利》だが、一方で、ヴェルフリンのような概念化は《うっかりすると図式化する危険性がある》。実際のバロックは、反古典的様式という概念には収まりきらない、豊穣で複雑なものをもっているのである。単純化した説明の後で、高階先生は、バロックのもつ「写実性」「光」「装飾性」「浮遊性とダイナミズム」「都市空間と建築」「演劇」「音楽」など様々な観点から、その奥深さを分析している。

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書評 『バロックの光と闇』 高階 秀爾 ①

先日、名古屋市美術館の『カラヴァッジョ展』に行き、ミュージアムショップで購入した一冊。小学館版『バッハ全集』全15巻に、「バロックの美術」として掲載した文章をまとめたものだが、タイトルは高階先生の代表的名著『ルネッサンスの光と闇』になぞらえたものだろう。

『ルネッサンスの光と闇』のような大著というのではないが、連載式でも毎回違った観点からバロック美術を扱っており、さすがバランスのとれたわかりやすい解説書になっている。わかりやすく単純化した「バロックの定義」と、古典主義、マニエリスム、写実主義、ロココ美術、ロマン主義とも深く関わりをもつ多義的で複雑な「バロックの奥深さ」の両方を、読者に提示してくれているのだ。

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クリスティーナ女王

スウェーデン女王クリスティーナ。本名はクリスティーナ・フォン・シュヴェーデン(後に改宗してクリスティーナ・アレクサンドラ)。1626年ヴァーサ朝スウェーデン王のグスタフ・アドルフの子として生まれ、父王の死後、わずか6歳で即位。 続きを読む


書評 『デカルト、コルネーユ、スウェーデン女王クリスティナ』 エルンスト・カッシーラー

ユダヤ系ドイツ人のエルンスト・カッシーラーが、ナチス政権中の亡命先スウェーデンで上梓した『デカルトー学説、人格、影響』からの抄訳フランス語版を全訳したものである。クリスティナ女王への興味から手にとったのだが、とても示唆に富む面白い本だ。 続きを読む


書評・小説 『真珠の耳飾りの少女』 トレイシー・シュバリエ

昨年から日本最大のフェルメール展が上野の森美術館、そして現在では大阪市立美術館で開催され大きな話題になっているが、この作品は、ヨハネス・フェルメールの超有名な「真珠の耳飾りの少女」の誕生秘話を綴ったフィクションである。2003年にスカーレット・ヨハンソン主演で映画化された。

画家フェルメールの家に女中として住みこみを始めた一人の少女が主人公。少女はフェルメールの意地悪な妻や娘に怯えて暮らしながら、陰ながら彼を慕い、やがて彼の絵の手伝いを任されるようになり、少女から女性へと開花していく・・・彼のストーリーは勿論、全て作者の想像なのだけど、フェルメールが生きていた時代や場面の再現はとてもリアリティに溢れていて、そこに、謎めいたこの魅力的な作品の生まれるまでが、作品と同じように静謐にでも官能的に描かれている。

恥ずかしながら、フェルメールが当時のオランダ人には珍しくカトリック教徒であることを、この作品を読んで初めて知った。それまでは、フェルメールの描く布や石などマテリアルの圧倒的な質感が、オランダ商人たちのプロテスタント的文化の表れかな、なんて思っていたのだが。でも、それだけではないフェルメールの作品の魅力、神秘的な深い精神性みたいなものは、カトリック絵画的な要素から来ていたんだな、とこれを読んで納得した。

来日中のフェルメール作品を見に行きたいけれど、フェルメール人気が高過ぎて、7年前に国立西洋美術館開催された「フェルメール展」の激コミぶりに辟易して帰ってきた記憶がある・・・やっぱり、オランダの日差しが差し込む静謐な雰囲気の中で見たいなあ・・・って贅沢か。