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書評 『江戸とアバター 私たちの内なるダイバーシティ』 池上英子 田中優子 ②
池上氏は、《なべて「人格」とか「個」とか呼ばれるものは、統合性のある首尾一貫した実在だという通念は神話にすぎない》というアバター的人間観を押し進め、人間のコミュニケーションやネットワークのあり方、という問題に敷衍していく。 人間一人ひとり... -
書評 『江戸とアバター 私たちの内なるダイバーシティ』 池上英子 田中優子 ①
クラブやサロンなど、特殊な場とネットワークのあり方について調べていく中で、日本における江戸時代の都市文化に自然と興味が湧いていった。その中で、連や江戸の特異なネットワークの在り方という点でいつも面白い視点を与えてくれるのが田中裕子氏の著... -
書評・小説 『虚無への供物』 中井英夫
松本清張の『熱い絹』の記事でも書いた通り、元来私は、推理小説というものを読まないのである。私自身が、物語に求めているのは別の世界に連れ去られるような疑似体験であって、知的遊戯ではないのかもしれない。でも、小説のプロットの立て方とかストー... -
書評 『聖母の全美術史 信仰を育んだイメージ』 宮下 規久朗 ②
前回の記事で触れた内容は、言わば聖母の美術史における「正統」な系譜である(正統の割には、信者には理解し難い奇抜さやエロティックさがあることは否めないが…それはさておき)。本書の面白さは、この正統な聖母美術史だけではなく、ある意味で異端で亜... -
名言・名文・名句 『裏庭』 梨木 香歩
「癒しという言葉は、傷を持つ人間には麻薬のようなものだ。刺激も適度なら袂に感じるのだ。そしてその周辺から抜け出せなくなる。癒しということにかかわってしか生きていけなくなる。」