レビュー・映画 『女王フアナ』


2001年スペイン制作。スペインの巨匠、ビセンテ・アランダが監督と脚本を務めた。本国で大人気を博し、ゴヤ賞、サンセバスティアン映画祭主演女優賞などを獲得した。
コロンブス新大陸発見のスポンサーとなったことで有名なカスティーリャ女王、イザベラ。その娘で、やがて奇しくもカスティーリャ女王の跡を継ぐことになり、夫の死後発狂したとの烙印を押されて、47年間幽閉されたまま死を迎えたという悲劇の女王フアナを主人公にした物語である。
ストーリーは基本的に史実を忠実に再現したもの。政略結婚のためにフランドルのハプルブスク家、美男公フェリペの元に嫁いだフアナは、スペインに残った兄弟姉妹が偶然にも全て病死してしまった為、呼び戻されてカスティーリャ女王になる。しかし、夫の浮気に悩まされ、さらには政権を握ろうとする実父や夫などの思惑に翻弄され、夫への執着心からやがて心のバランスを失っていく。
はっきり言って、ストーリー的にはそれほど内容が濃いものとは思えなかった。歴史物の映画にありがちですが、人間の心理描写や出来事の必然性がどうも中途半端な気がする。衣裳やセットに力を入れすぎてしまうからだろうか・・・
しかし、この作品の衣裳や舞台は本当に素晴らしい。スペインの黒と赤の色彩、近代夜明け前の濃い暗闇、アンダルシアのエキゾチックな雰囲気、フランドル地方の光、、、、作品の解説に、「まるでフェルメールの絵のような」と書かれていたが、まさにその通り。特にフィリップとフアナが最初に出会うシーンには、窓からフランドル地方の光が淡く差し込んでいて、本当に美しい一幅の絵を観るようだ。
それから、主演女優のピラール・ロペス・デ・アジャラの黒髪と浅黒い肌のエキゾチックな美しさ、フィリップ役のダニエレ・リオッティのラテンとゲルマンがいい感じに融合した感じのセクシーさ、これも楽しみの1つ。ピラール・ロペス・デ・アジャラは、演技にもすごく力があって、美しいのにどこか狂気を孕んでいるようなフアナを熱演している。
映像を楽しむだけで、2時間右脳だけで観ていられるような映画だった。
フアナは本当に狂女だったのかどうか、、、今では、政争に巻き込まれ、王位から退かせるために狂ったことにされた、という見方が一般的なようだ。一方で、母方が遺伝的に精神病を煩っていたのだ、という説も。個人的には、当時の近親結婚を繰り返していた王家に、そういう人が生れる可能性は高いと思うのだが・・・逆に、王族の人がその程度の錯乱状態に陥ることもまた普通だったのかもしれない。なので、やはり、フアナが幽閉された一番の理由は、安定しないスペインの政治情勢に翻弄されたからではないかと思った。いずれにせよ、真実は闇の中である。

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