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項羽は劉邦にくらべーーというより誰に対してもーーけたはずれに強い自己を持っていた。自己という呼称の生き物といってよく、なみ外れて多食し、その太い頸を多量に通過してゆく咀嚼物はすぐさま力になって欲望にかわった。・・・この炎のために、項羽は他人の心といううものが見えにくかった。このことは項羽に攻略や戦略という感覚を欠かせてしまったことと無縁ではない。さらにこのことは、馬を愛し、女を愛することにもつながった。その愛し方ははげしすぎるというよりも、自己の延長もしくは自己そのものとして愛しているようであった。
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