メイ・サートンの代表作。45歳を過ぎた著者が、初めてニューイングランドの古い屋敷と広大な敷地を手に入れ、新しい自分の住み家をつくりあげていく、静かだけれども躍動感のある活き活きとした日々。
どの章をとってみても、凛とした静謐な文章で、ニューイングランドの厳しい自然の中で孤独と追憶と瞑想と、新しい体験と創造に溢れた生活が綴られていて、読む者にとって誠に心地よい。
前回読んだ『独り居の日記』は、この『夢見つつ深く植えよ』が余りに素晴らしく、メイ・サートンの人生までが完結してしまったかのように祭り上げられてしまったことに彼女自らが反抗し、敢えてその後の彼女の内面の葛藤や怒りを、誠実に書き起したものだった。
順番が違うのだけど、『独り居の日記』を先に読んでいたことによって、返ってこの『夢見つつ深く植えよ』で綴られている時間の素晴らしさが際立ったような気がする。もしそれが無かったら、確かに少し美しいロマンティック過ぎる御伽噺的な感じがしてしまったかもしれないが、これだけ豊富で濃密な時間を過ごした後に、『独り居の日記』で綴られたような、苦悩や葛藤の時間がまたも訪れる、というところに、メイ・サートンの人生と創造への真摯な姿勢と奥深さが感じられるのだと思う。
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