「ああ、春の匂いがするわ」エミリーは小川にそった小道を踊るように歩きながらさけんだ。
やがて、彼女は春を主題にした詩をつくりはじめた。かつてこの世に生きていて、二行の脚韻をならべることのできた人間ならばだれでも、春を主題にした詩を書いたものだ。春は世の中で、いちばん詩にふさわしい主題なのだ。これからも、いつまでも、やはりそうだろう。なぜなら、春は詩そのもの化身なのだから、春を主題にした詩を、少なくとも一編でもものしなかったら、ほんとうの詩人にはなれないのだ。
『可愛いエミリー』モンゴメリ・村岡花子訳
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