すべて、この世界では同じことをしないで新奇なことをしなければいけない。くりかえしということはいやがられるのである。それでぱっと逢った初対面の人とニコヤカに話し、時間いっぱい、最大級に愛想よくして、きめられた時間がくるともう見向きもせず、次の人や次のことがらに熱烈に向きあう。ゆっくりモノをいう間もなく、じっくり眺めるひまもなく、昨日のことでもストンと忘れて十年前ぐらいの古いことになってしまう。すべて何でも、いっぺん経験すると、
(よし、わかった)
(あんなもん、一ぺんやったらいい)
というので、もうすっかり、何でも知りぬいてるように見下げて、ぽんぽん撥ねのけ、夢中で新しいものを漁りつづける。そういう人たちでみちみちている。
目次
コメント