書評・小説 『アルトゥーロの島』 エルサ・モランテ


池澤夏樹氏選集の世界文学シリーズ、イタリア文学版。ナタリア・ギンズブルクの「モンテ・フェルモの丘の家」とともに、このエルサ・モランテ作「アルトゥーロの島」が収められている。
ナポリに浮かぶ島で、産まれると同時に母親を亡くし、行方のわからぬ旅に出たまま時折しか家に戻らぬ父親だけを身内に、孤児同然に世間から隔絶した生活を送りながら育った少年アルトゥーロ。ある日、その父親が自分と殆ど歳の違わぬ継母を連れて来る。少年から青年へと成長していく微妙な時期の性の目覚め、憧れの喪失、心の葛藤などが、美しい島の風景とともに時にみずみずしく、時に狂おしく、女性らしい細やかな感性で描かれている。
文章の美しさと緊張感のあるストーリー展開で、終わりまで一気に読めてしまう。素晴らしい作品だったので、改めて作者のモランテについて調べたところ、私の好きな作家アルベルト・モラヴィアの妻で、さらに彼の作品の中でも大好きな『金曜日の別荘』は、そのモランテとルキノ・ヴィスコンティとの三角関係を描いたものなのだと知り、二度びっくり。そのあたりのエピソードは、モラヴィアの『軽蔑』の記事でも少し触れた。

以前、パヴェーゼの『月とかがり火』の記事で、私はイタリア映画は好きなだが、イタリア文学はどうも肌が合わない・・・といったことを書いた、最近、徐々にイタリア文学の魅力にはまりつつある。文章が淡々としているのに感覚的で美しくて、作者の思想や登場人物の感情が主張し過ぎないところが良い。以前はそれがつかみどころがなくて物足りない感じがしていたくせに・・・ゲンキンな話だ(笑)
前に読んであまりピンとこなかったギンズブルクやタブツキ、それからちょっと敬遠していたカルヴィーノやブッツァーティなんかにもこれから挑戦してみたいと思っている。

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