読書と書評一覧

書評・新書 『文芸サロン その多彩なヒロインたち』 菊盛 英夫 ②

革命後のフランスでは、文芸サロンの役割は、カフェやそこで発達したジャーナリズムに分散されていき、強烈な愛国者であるジュリエット・アダンのような政治色の濃いサロン、或いは画商アンブロワーズ・ヴォラールが印象派の画家たちを集めたような、パトロン・スポンサー的意味合いの強いサロンなどが登場してくる。また、作家たちが経済的に自立することにより、フロベールやゾラや、現在もフランス最高峰の文学賞として名前を残すエドモン・ド・ゴンクールなど、作家自身がサロンを開くことになってきたのも、資本主義の成熟してきた社会の風潮をよく表していると言えるだろう。パトロンやスポンサーという観点からサロンというものの変遷を考えてみるのも、非常に重要な視点だろうと個人的に考えている。 続きを読む


書評 ・新書 『文芸サロン その多彩なヒロインたち』菊盛 英夫 ①

西欧の文芸サロンを古くはルネサンス期のイタリアから20世紀初頭のプルースト『失われた時を求めて』で描かれるようなフランスサロンの衰退期に至るまで、サロンの女主人公を紹介しながら纏めたもの。新書なのでやや羅列的なところはあるが、ドイツ文学史の先生だけあって、哲学史・文化史的な観点が随所に見られて面白い。

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書評・小説 『八月九日の暗号 幻花』 剣町 柳一郎

『満州国演義』シリーズをご紹介いただいたインスタグラムのフォロワーさんが、満州好きが高じて小説まで上梓されたとお聞きしたので、お手元に残った貴重な一冊をお売りいただいた。今年の夏は、満州国演義に始まり満州国演義に終わる、という感じで暮れていき、読破した後は軽い「満州国演義ロス」に陥っていた私には、喪失感を埋める嬉しい本だった。(マニア過ぎる夏) 続きを読む


書評・小説 『満州国演義 九 残夢の骸』 船戸与一

長かった『満州国演義』シリーズもついに最終巻。追い詰められた日本は、東条内閣総辞職で幕開け、台湾沖航空戦、フィリピン、沖縄、特攻隊の突撃、長崎と広島の原爆、そして、最後の最後まで「一億玉砕」を唱える強硬派との行き詰まる駆け引きが続く中、ついに無条件降伏。昭和二十一年五月、復興に向かう広島に、四郎が三郎から託された満州の遺児を送り届けるところで物語は終結する。 続きを読む


書評・小説 『満州国演義 八 南冥の雫』 船戸 与一

第8巻では、初戦の快進撃から一転、ミッドウェー開戦から一気に日本軍は戦局不利となり、アッツ島、マーシャル諸島、ガダルカナル島など南太平洋の重要拠点で次々と惨敗し、東南アジアでは最大の作戦インパール作戦で敷島兄弟の次郎が無残な死を遂げるまで、が描かれる。 続きを読む