『ものうりうた』(「こどものとも年少版」通版512号)文:雪舟えま 絵:植垣歩子 出版社:福音館書店
懐かしの屋台から子供の大好きな食べ物まで。ものうりうたの懐かしさと新しさを発見する楽しい体験
<概要>
その名の通り、「いしやーきいもー」から始まる、ものうりうたの数々。今の子供は殆ど知らない「おとうふやさん」「さおだけやさん」「バナナのたたきうり」から、美味しそうな「ラーメンやさん」や「アイスクリームやさん」、新しいものでは「ベーグルやさん」まで、色々なものうりうたが登場します。
<おすすめタイプ>
歌いながら読めるので、2、3歳の子から。内容に興味を持てれば5、6歳でも十分楽しめます。男の子でも女の子でも。
<おすすめポイント>
福音館書店の月間予約本シリーズ「こどものとも」は、保育園や幼稚園で配布しているところも多いので、ご存知の方も多いのでは。このシリーズ、薄い冊子で読みやすいのに面白いものが多くて、セレクトに悩みましたが、ちょっと変わったこの一冊をご紹介します。
昔懐かし「ものうりうた」のオンパレード。絵はコミカルで、なんとなく昭和を感じさせるタッチでなので、いつも見ているアニメや絵本とはまたちょっと違った雰囲気を味わえるのではないでしょうか。何度も言うように、「いろんなタイプの絵を見せてみる」というのは大事なことだと思います。そういう意味でも、「こどものとも」シリーズは、毎回毎回絵のタッチやタイプが違うものをセレクトしてあるので良いなあ、と思います。親があんまり好きな絵でなくても子供が興味を持つかもしれないし、子供が「このえきらい」と言ったら、それもそれで重要なサイン。「どうして?」「どこがきらいなの?」とお話してみることで、子供のこだわりやひっかかりが分かるかもしれません(往々にして、「きらい」は「きになる」の裏返しだったりします)
絵本に興味を持つきっかけとなる「「取っ掛かり」については、楽しい「ものうりうた」がきっかけを与えてくれます。小さい子供は、とにかく歌や言葉遊びが大好き。古過ぎて「ものうりうた」が分からない、という若いお母さんもいるかもしれませんが、そんなのは適当に節をつけてしまえば大丈夫です。私も、殆ど「いしやきいも」か「さおだけや」と同じメロディじゃん、と心の中で自分にツッコみながら歌っていました(笑)
会話ができる子供なら、中身に入っていって「広がり」を持たせられるのも、この本の良いところ。子供の大好きなアイスクリームやお好み焼き、ちょっと珍しいベーグル屋さんが出てくるのも楽しいし、「さおだけってなに?」「ふうりんってなに?」「むかしはおとうふはスーパーじゃなくて、こうやって買ったの?」と、昔の時代や風物に興味を持つ子も多いと思います。
私は、昭和時代を感じさせる絵本が結構好きで、そういうものをよく読み聞かせます。子供にとって「ちょっとだけ昔の時代」「パパやママやおじいちゃんおばあちゃんが小さかった頃の時代」というのは、ものすごく昔のようで、でも、確かに自分に繋がっている時代で、自然と興味を惹かれる時代なんじゃないかなあ、と思うのです。「パパやママがあなたたちくらいの頃」のイメージが、子供たちの最初の「歴史の発見」なのではないでしょうか。
コメント