『どうぞのいす』
作:香山 美子 絵:柿本 幸造 出版社:ひさかたチャイルド
小さい子でもストーリーを楽しめる、読み聞かせの初期に最適の本。可愛くて温かい色調の絵も素敵です。
《概要》
うさぎさんが小さないすを作りました。小さなしっぽをつけたいすのそばには立て札が一つ。「どうぞのいす」。そこへ、ろばさん、くまさん、きつねさん、りすさんが順番にやってきて、、、あれれ、みんなが「どうぞ」の気持ちを忘れずにいたおかげで、最後は、ろばさんのどんぐりが、いつの間にかくりに変わっていましたよ。
《おすすめタイプ》
1、2歳から。動物好きな子にもおすすめ
《おすすめポイント》
日本で100万部を超えたベストセラー、『ぐりとぐら』や『からすのパン屋さん』に並ぶ定番中の定番絵本です。
日本の出版社はひさかたチャイルドですが、アイキャッチ画像で表示した写真は、うちで所蔵しているタイ製のもの。日本語とタイ語が併記されています。タイのバンコクでは、紀伊國屋で日本製絵本をたくさん購入できますが、タイ製で日本語も併記されている絵本というのは中々貴重です。この絵本も、紀伊國屋ではなく、なんと日系のスーパーで買いました。『どうぞのいす』が、いかに普及しているかが分かります。
『しゅっぱつ、しんこう』の記事でも書きましたが、柿本幸造さんの描く動物はとっても可愛くて、色調にも質感にも柔らかさと温かみがあって大好き。うさぎさんも可愛いですが、お目目くりくりのロバさんや賑やかなりすさん達も愛嬌たっぷりです。うさぎさんのいすには小さなしっぽがついていたり、初めから終わりまで密かにおこぼれを頂戴している食いしん坊の小鳥さんがいたり、細部まで楽しめるのも良いところです。
そして、前回の『しんせつなともだち』でも書きましたが、この絵本も「くりかえし」のパターンが生きています。ろばさんはどんぐりを、くまさんははちみつを、きつねさんはパンを、りすさんはくりを持ってやってきて、「どうぞのいす」に置いてあるものを食べてから、自分のを置いていく。そのくりかえし。そして、最後の最後で、初めにろばさんが持ってきたどんぐりが、いつの間にかくりに変わってる?どんぐりってくりの赤ちゃんだったっけ?と、初めに戻る仕掛けになってきます。これも、2、3歳の子だと、「初めにろばさんがどんぐりを持ってやってきた」ということ自体を忘れてしまっていたりするので、ストーリーを追って体験する、良いトレーニングになると思います。
もちろん、みんなが「えんりょなくいただきましょう」と言った後で、ちゃんと次の人のために「どうぞの気持ち」を忘れずにいてあげる、その礼儀正しさと温かい気持ちも素敵です。そういう、お話自体が「素敵な気持ちリレー」で進行していくところも、『しんせつなともだち』と似ていますね。
あと、どんぐりっていうのも個人的に好きです。どんぐりって、小さい子供は異常に好きじゃありませんか?私なんて、大人になっても好きなので、今でも見つけると意味なく拾ってしまいます。どんぐり。もう、これだけで子供のとっかかり十分なのではないでしょうか。『ぐりとぐら』の最初も、どんぐりとくり拾いから始まりますよね。「どんぐり」「パン」「ホットケーキ」「かぼちゃ」あたりは、日本の絵本の最高パワーワードですね。いつか、このテーマでの絵本紹介記事を書きたいなあ、と密かに思っています(笑)
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