お花見シーズンにおすすめの本厳選5選!桜を見ながら小説や漫画の物語に浸りたい


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お花見シーズンにおすすめの本5冊を紹介

来週からは桜の開花が進み、いよいよお花見のシーズン到来です。春は、卒業や入学など、何かとドラマが多い時期なので、春を舞台にした青春小説なんかは結構ありますが、「花見」「桜」をメインにした物語、というと中々ありそうで難しい。今回は、珍しい、「桜」がテーマになった小説と漫画5選をご紹介します。古来から、狂言や和歌などでは、飽きるほど扱われてきた「桜」を、現代版の物語で味わえます。

1. 『桜の森の満開の下』 坂口 安吾

通る人々が皆「気が変になる」鈴鹿峠の桜の森。その秘密を探ろうとする荒ぶる山賊は、ある日美しい女と出会い無理やり妻とする。しかし、それが恐ろしくも哀しい顛末の始まりだった。奥野建男から「生涯に数少なくしか創造し得ぬ作品の一つ」と激賞された、安吾の代表的小説作品。(Amazonより)

これはもう、桜と言えば昔から定番の小説ですね。桜の美しさの陰にある恐ろしさ、おどろおどろしさ、狂気、と言ったものを、こんなに短く簡潔に印象的な物語で表現した作品は他に無い、と言っていいでしょう。人間の憧憬や欲望の果てしなさや悲しさが、一時だけ咲き誇り、あとは舞い散るだけの桜の花に象徴されています。《大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした》という冒頭の言葉から、衝撃的なラストシーンまで、心を掴まれる文章で止まらなくなります。

講談社文芸文庫版で収められている他の短編もお薦めですが、本編飲みならAmazon kindleで無料で手に入れることもできます。本当に数分で読めてしまうので、一人花見のお供に、舞い散る桜の下で読み耽るのもいいかも。

2. 『怪談・奇談』 ラフカディオ・ハーン(角川文庫クラシックス)

その魂の底に清らかな情熱を讃えた庶民詩人は、日本の珍書奇籍をあさって、久しく塵にまみれていた陰惨な幽霊物語に新しい生命を注入した。壇の裏の合戦というロマンティックな歴史的悲劇を背景に、盲目の一琵琶法師のいたましいエピソードを浮彫りにした絶品「耳なし芳一のはなし」等芸術意味豊かな42編。(角川文庫クラシックスより)

坂口安吾の『桜の森の満開の下』で、桜の花は怖しい、という文章を引用しましたが、こちらも、「怖しい桜」の姿を感じられる一冊です。美しいから怖しいのか、怖しいから美しいのか。古来から日本では、桜は「死」と「狂気」の象徴として扱われることが多いです。

この角川文庫クラッシクスの『怪談・奇談』の中には、タイトルに桜が掲げられた名作2編「十六桜」と「乳母桜」が収められています。ごくごく短い話ですが、桜の木に人間の魂が宿っている、という日本古来からの世界観が伝わってきます。それだけでも結構不気味で神聖な感じがしますが、もっと「狂気」と「怖しさ」を味わうのであれば、「因果ばなし」がオススメ。こちらも短くてすぐネタバレになってしまうので、ストーリーは割愛しますが、女の嫉妬と怨念が美しい桜の木の下で明らかになる、かなりコワーイお話です。

3. 細雪 谷崎 潤一郎

大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。(Amazonより)

短編が続いたので、今度は大長編を。谷崎潤一郎の『細雪』です。かなり長いので、春の季節が中心になっているわけではないのですが、三姉妹のお花見の様子が、彼女たちの優雅さ、儚い美しさ、時の移ろいを象徴する印象的なエピソードとして挿入されています。有名なお花見シーンは、しっとりとした風情に浸りながら、是非、桜の季節に読んでみてほしいです。

大阪の船場、関西の上流社会の様子についての文学あれこれについては、「関西スノビズム文学散歩」の記事で紹介していますので、ご興味がある方は是非こちらも一読くださいね。

『桜の木の下で』 渡辺 淳一

桜の魔性に憑かれたように同時に同じ男を愛してしまった母と娘の悲劇の中に、悦楽と背徳の美を精緻に描きだした長編小説。(Amazonより)

桜のイメージには、怖しいとか儚いとかの他に、官能的でエロティック、というのもありますね。この小説は、映画化もされた渡辺淳一の代表作。ザ・渡辺淳一という感じの官能小説です。ここまでベタなシチュエーションの桜を物語に仕立てている作品って意外と無いものですね(笑)褒めているのか貶しているのか微妙な感じになりますが、敢えて通俗的な桜に浸る、というのも一興(かも?)。

『櫻の園』吉田 秋生

丘の上の女子高校、桜華学園。春の創立祭で、チェーホフの“櫻の園“を演じる演劇部員たち。思春期の乙女達のほのかな心情をセンシティブに綴る必読の連作短編集。(Amazonより)

最後にご紹介するのは漫画ですが、私の中では実は一番の「推し」かもしれません。吉田秋生により1985年から1986年にかけて連載された作品で、1990年に実写映画化、2008年に同監督によりリメイクされたという、吉田秋生ファンには定評のある名作です。

桜の花の儚さと美しさ、だけでなく、どこか鬱陶しい感じとか、うつろいやすくて危うげな感じとか、が、青春時代のそれと重ね合わされて見事に描かれています。少女とは、青春とは、かくあるもの、よく分からなくてめんどくさくて、淡くて脆い。その辺りを描かせたら、吉田秋生センセの右に出るものはいない、と思います。若い人はもちろん、そんな時代が遥か昔になってしまった人も、そんなんだったっけなあ、なんて思い出しながら読んでみてほしい。

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