食べ物や食の描写が楽しめる小説10選!食事シーンの表現や書き方が秀逸なおすすめ小説。村上春樹や池波正太郎などの人気作品から恋愛・江戸時代ものまで様々なジャンルの小説


秋と言えば食欲の秋!

食いしん坊の私にとっては、食べ物の描写や食の表現は、小説を読む大事な楽しみの一つです♪

印象的な食事シーンや食の書き方が秀逸な小説を10冊選んでみました。

グルメな小説としてお馴染みの池波正太郎や村上春樹の作品から、恋愛物語や江戸時代ものまで色々なジャンルの作品を集めています。

読んだら絶対に美味しいものを食べに行かなければ気が済まなくなりますので、その点は心してお読みください。

目次

《食べ物の描写が秀逸な恋愛小説・短編集》

『春情蛸の足』 田辺聖子

『春情蛸の足』をお得に読む

「熱、つつ、つ」。偶然たどりついた店で出会った、いとしのお好み焼き。初恋の相手に連れて行かれた理想のおでん。彼女の食べる姿に惚れたきつねうどんにたこやき。妻が味を再現できないすきやき。そして離婚相手と一緒に味わうてっちり……。読むと幸せになれる、食と恋の短編集。笑って恋して腹がすく。

(講談社BOOK倶楽部より)

美味しい描写の小説、と言ったら、田辺聖子先生の作品は外せません。短編長編問わず、思わず涎の出そうな関西グルメが出てくる作品がたくさんありますが、食の描写でおすすめなのはこれ。お好み焼きにおでん、きつねうどんにたこやき・・・関西の庶民派グルメの美食・美味が目白押しです。

食べることと恋愛・セックスの距離はとても近い。どちらもストレートな欲望の現れだから。それが変に哲学的にでなく、嫌味でなく、それでいて深く楽しめるのが田辺聖子の小説の良いところだと思います。

美食倶楽部林真理子

『美食倶楽部』をお得に読むには

ふぐの白子、蛙の煮込み、鮒鮨に鶏の水炊き。モデルクラブの女社長・三十三歳の祥子の楽しみは食べること。美食の秘密をちりばめた表題作他、広告代理店のエリートと流行作家の不倫「幻の男」、由緒ある高級住宅地を舞台にした人間洞察の傑作「東京の女性」。食欲、男、そしてプライドに踊る都会の女たちを描く、充実の小説集。

「BOOK」データベースより

田辺聖子先生の短編集が庶民派グルメの代表格なら、こちらの林真理子先生の作品は、いかにもバブリーな「ザ・美食」を楽しむ作品。表題作は、冒頭のふぐの白子の「うっすらと焦げ目がついて」「箸でちぎると、待ちかまえていたように、乳色のねばっこい液体がどろりと流れ出す」描写から始まり、名店「香取」のふぐ雑炊、郊外の一軒家風レストラン「高田亭」のオマールの冷製に仔牛の胸腺煮込み、代々木八幡の中華料理屋で出す蛙料理に・・・と、とにかくグルメ描写のオンパレード。三篇目の「東京の女性(ひと)」は、グルメ描写は少ないものの、高級和菓子の栗かのこと淹れたての玉露、「梅林堂」の桜餅と香り高い日本茶、なんてさりげない描写がまた食欲をそそります。

表題作の主人公は、かつてはモデルだった過去も忘れて、今は色気より食い気。食は私を裏切らない、「いいじゃない、女同士さ、小金を貯めてこういうおいしいものを食べてさ。これが極楽よ」と言い切る潔さは清々しいほど。食とは?欲望とは?なんて小難しいことを考えずに、貪欲に欲望に溺れることのできるバブル時代のストレートさは、平成不況や令和の世代からするといっそ羨ましく新鮮にも映るかもしれません。

『おめでとう』川上弘美

『おめでとう』をお得に読むには

忘れないでいよう。今のことを。今までのことを。これからのことを。

小田原の小さな飲み屋で、あいしてる、と言うあたしを尻目に生蛸をむつむつと噛むタマヨさん。「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」とこちらが困るような率直さで言うショウコさん。百五十年生きることにした、そのくらい生きてればさ、あなたといつも一緒にいられる機会もくるだろうし、と突然言うトキタさん……ぽっかり明るく深々しみる、よるべない恋の十二景。

(「BOOK」データベースより)

表題作で、のっけから主人公が列車の中で食べている笹かまぼこ。「春の虫」で出てくる「赤飯のおむすび、蕗、さといも、海老フライ、つけもの数種類、ほうれん草のごまよごし、焼き豚、豆」の手作りのお弁当、温泉旅館で失恋話をしながら食べる、わさびをつけたほたて貝のひも。

川上弘美さんの作品には、何気ない描写の中に、食べることを大事にする姿勢みたいのがあって、読む方は素直に食べるのを楽しみたい気分になります。そういう意味で、江國香織さんの小説にも似たところがああるんですが、江國さんの方は、もっときちんと食べることに向き合わなければいけない真摯さがあるのに対し、川上弘美さんの方は「コンビニ弁当でも美味しいよ」的気楽さがあります。川上弘美さんの物語の、ほのぼのとして抜けていて、それなのにどこか寂しい切ないような感じが、食の描写にも満ちています。

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村上春樹などの長編で食事シーンや食べ物の描写が印象的な小説》

『なかなか暮れない夏の夕暮れ』 江国香織

『なかなか暮れない夏の夕暮れ』をお得に読むには

資産家で、気ままな一人暮らしの稔は五〇歳。たいていは、家で本ばかり読んでいる。読書に夢中になって、友人で顧問税理士の大竹が訪ねてきても気づかないぐらいだ。姉の雀も自由人。カメラマンでドイツに暮らしている。稔に似て本好きの娘の波十は、元恋人の渚と暮らしていて、ときどき会いにやってくるが…。なかなか暮れない、孤独で切実で愛すべき男と女たちと、頁をめくる官能と幸福を描く長編小説。各紙誌で大絶賛された傑作、待望の文庫化。

「BOOK」データベースより

江国香織さんの小説も、いつも美味しそうな食の描写で溢れていますが、中でもこの『なかなか暮れない夏の夕暮れ』は、もう確信犯で、そそる食べ物の描写が次々と出てきます。

小料理屋を営んでいるチカの料理は、焼き茄子と枝豆と天豆、ずいきの入った冷製茶碗蒸し、鮎の春巻、銀鱈の西京焼、穴子の白焼きと冷やしトマト、エンドウマメのすり流し。お店の冷蔵庫には、スライスして茹でたゴーヤ、なすの煮びたし、たれに浸かった切り身魚、うずらの玉子などがタッパに並べられ、開店前のカウンター席に腰掛けたさやかが梅酒を飲む横で、チカが包丁に体重をかけて茹であがったとうもろこしをざくざくと切っている・・・これを読めば、夏バテの食欲不振もあっという間に解消すること間違いなし!タイトルから分かる通り、夏の美味をメインに、日本人らしい季節感をめいっぱい感じられる食材や食事の描写がさらに食欲をそそります。

伝統的な夏の日本の美味だけでなく、主人公の稔が読んでいる本から抜け出してきたピッティパンナ(スウェーデンのじゃがいも料理)、プランテイン(青バナナのフライ)、カルニタス(豚肉をオレンジの皮と果汁と大蒜で煮込んだメキシコ料理)といった珍しい料理が楽しめるのも、食通にはたまらない魅力です。

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⒌『BUTTER』柚木麻子

『BUTTER』をお得に読むには

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。若くも美しくもない彼女がなぜ―。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。

「BOOK」データベースより

人気作家、柚木麻子さんの作品。実際にあった「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋佳苗被告による連続結婚詐欺&殺人事件をモデルにした、サスペンス的要素もあるエンタメ長編小説です。

ストーリーは結構ハラハラドキドキする展開もありつつ、現代人の抱える承認欲求やそれに囚われている息苦しさみたいなものにも迫っています。物語の主題はさておき、食いしん坊が注目したいのは、容疑者の梶井真奈子と主人公の親友怜子の食通ぶりから引き出されるグルメな描写とエピソードの方。

タイトルのBUTTERが示す通り、サイコパスな美食家の梶井真奈子はバターに並々ならぬこだわりを持っています。梶井真奈子に感化された主人公が、温かいご飯の上にフランスの高級バター・エシレをのせて食べるシーンは印象的で、試してみたくなること間違いなし。主人公が深夜に啜るラーメンの描写を読むと、思わず近所のラーメン屋に駆け込みたくなります。

ただ美味しそうな描写を楽しむだけでなく、根源的な欲求と繋がった食の奥深さを感じる作品です。

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かもめ食堂』 群ようこ

『かもめ食堂』をお得に読むには

ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれどもお客といえば、日本おたくの青年トンミひとり。ある日そこへ、訳あり気な日本人女性、ミドリとマサコがやってきて、店を手伝うことになり…。普通だけどおかしな人々が織り成す、幸福な物語。

「BOOK」データベースより

群ようこさんのこちらの小説は、荻上直子監督により映画化もされて話題になりました。森、オーロラ、ムーミン・・・日本のフィンランドブームの先駆けとなった作品と言えるでしょう。どこか浮世離れしているのに、ほのぼのと温かい、大人の女性が読んで楽しいおとぎ話です。

タイトルに食堂とあるものの、この小説の中で出てくる食べ物の描写はごくわずかです。主人公のサチがつくるおにぎりと、シナモンロール、そしてコーヒー。それだけなのに、なぜだかすごく美味しそう。《昔の食堂みたいに近所の人がやってきて、楽しく過ごして、食べる物は素朴だけどおいしい。》サチが思い描くお店に、行ってみたい気持ちにさせられます。

『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

『ダンス・ダンス・ダンス』をお得に読むには

『羊をめぐる冒険』から四年、激しく雪の降りしきる札幌の街から「僕」の新しい冒険が始まる。奇妙で複雑なダンス・ステップを踏みながら「僕」はその暗く危険な運命の迷路をすり抜けていく。七〇年代の魂の遍歴を辿った著者が八〇年代を舞台に、新たな価値を求めて闇と光の交錯を鮮やかに描きあげた話題作。

「BOOK」データベースより

小説の中での美味しそうな食べ物と言えば、男性作家で村上春樹さんを上回る人はいないのではないでしょうか。私の場合、村上春樹さんの小説を読む楽しみの3割くらいは、食事と食べ物シーンに凝縮されていると言っても過言ではありません。長編小説のどれも美味しそうな描写が満載で捨てがたいのですが、一作選ぶとしたら、これ『ダンス・ダンス・ダンス』です。

村上春樹さんは小説家デビューの前にバーを経営していたことは有名ですが、それゆえか、『ダンス・ダンス・ダンス』の中には、美味しそうなお酒のおつまみみたいな料理が幾つも出てきます。《ホウレンソウを茹でてちりめんじゃこと混ぜ、軽く酢を振って、それをつまみに黒ビールを飲んだ》り、《長葱と梅肉のあえたものを作ってかつおぶしをかけ、わかめと海老の酢のものを作り、わさび漬けと大根卸に細かく切ったはんぺんをからめ、オリーブ・オイルとにんにくと少量のサラミを使ってせん切りにしたじゃが芋を炒めた。胡瓜を細かく刻んで即席の漬物を作った。昨日作ったひじきの煮物も残っていたし、豆腐もあった。薬味にはたっぷりと生姜をつかった》り、ささっと作って食べる感じが絶妙に美味しそうでそそられます。

もう一つ、村上春樹さんの小説には、いつも美味し応なサンドイッチが出てくることで有名です。村上春樹さんのサンドイッチとの関りについては、『海辺のカフカ』の記事でも取り上げているので、興味がある人は読んでみてください。もちろん、『ダンス・ダンス・ダンス』の中にも、これぞ王道、というハルキ・サンドイッチが登場しますのでお楽しみに。

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《池波正太郎など江戸時代・時代もの小説で食べ物の書き方が印象的な小説

『夫婦善哉』織田作之助

『夫婦善哉』をお得に読むには

惚れた弱みか腐れ縁か、ダメ亭主柳吉に尽くす女房蝶子。気ィは悪くないが、浮気者の柳吉は転々と商売を替え、揚句、蝶子が貯めた金を娼妓につぎ込んでしまう(「夫婦善哉」)。新発見された「続夫婦善哉」では舞台を別府へ移し、夫婦の絶妙の機微を描いていくが…。阿呆らしいほどの修羅場を読むうちに、いとおしさと夫婦の可笑しみが心に沁みる傑作等織田作之助の小説七篇を所収。

「BOOK」データベースより

織田 作之助、通称オダサクは、太宰治らと共に戦後の無頼派を代表する作家です。そのオダサクが1940年に発表して作家としての地位を確立するきっかけとなった作品が『夫婦善哉』。大阪は北新地の人気芸者で陽気なしっかり者の蝶子と、化粧問屋の妻子持ちの若旦那である柳吉が駆け落ちし、商売を試みては失敗し柳吉のだらしなさと浪費で苦労しながらも内縁の夫婦生活を続けていく様子が描かれています。

『夫婦善哉』は、過去何度も映画化やドラマ化されている人気作品ですが、戦前のどこか猥雑で人情味と活気のある大阪下町の風情が楽しめます。中でも、だらしないくせに食道楽の柳吉がこだわる味の数々《高津の湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼、粕饅頭から、戎橋筋そごう横「しる市」のどじょう汁と皮鯨(ころ)汁、道頓堀相合橋東詰「出雲屋」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭」の関東煮(かんとだき)、千日前常盤座横「寿司捨」の鉄火巻と鯛の皮の酢味噌、その向い「だるまや」のかやく飯と粕じる》・・・今はもうほとんど無いお店ばかりですが、美味しそうな匂いの立ち込めた下町が目の前に迫ってくるようです。

有名な「自由軒」のライスカレーを「あんじょうま、ま、まむしてあるよって、うまい」などとどもりながら食べている柳吉を想像すると、ため息つきながらも見捨てられない蝶子の気持ちも少し分かるような・・・?大阪人情、下町グルメのダメ男・・・日本人なら一度食べたらクセになってしまう風味かもしれません。

『剣客商売』池波正太郎

『剣客商売』をお得に読む

勝ち残り生き残るたびに、人の恨みを背負わねばならぬ。それが剣客の宿命なのだ――。
剣術ひとすじに生きる白髪頭の粋な小男・秋山小兵衛と浅黒く巌のように逞しい息子・大治郎の名コンビが、剣に命を賭けて、江戸の悪事を叩き斬る――田沼意次の権勢はなやかなりし江戸中期を舞台に剣客父子の縦横の活躍を描く、吉川英治文学賞受賞の好評シリーズ第一作。

BOOK」データベースより

ご存知、池波正太郎の『剣客商売』。藤田まこと主演のドラマの方が有名かもしれませんが、食通の大御所作家と言えば池波正太郎、というのは、昭和の常識ではないでしょうか。

グルメな池波正太郎のエピソードには事欠かず、グルメエッセイもたくさん、ついでに、池波正太郎が愛した名店を銘打つグルメ本もたくさん。どれを選んでも美味しそうな描写には事欠かないけれど、とりあえず基本の代表作と言えばこれかな、と思い『剣客商売』を選んでみました。

実際、シリーズとは別に『剣客商売庖丁ごよみ』という関連エッセイまで出しているくらい、この『剣客商売』には美味しそうな食事のシーンが豊富です。秋茄子へ水芥子をあしらった味噌汁、納豆汁、蛤を仕立てた汁で炊き上げ貝のむき身を入れてもみ海苔をふりかけた蛤飯・・・江戸情緒、人情、男の仁義、そういったストーリーの中に垣間見える、さりげなくでもとてつもなく美味しそうな表現を楽しんでみてください。男の人だけでなく、是非、女の人にも読んでみてほしい作品です。

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『卵のふわふわ』宇江佐真理

『卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし』をお得に読むには

のぶちゃん、何かうまいもん作っておくれよ―。夫との心のすれ違いに悩むのぶをいつも扶けてくれるのは、喰い道楽で心優しい舅、忠右衛門だった。はかない「淡雪豆腐」、蓋を開けりゃ、埒もないことの方が多い「黄身返し卵」。忠右衛門の「喰い物覚え帖」は、江戸を彩る食べ物と、温かい人の心を映し出す。

「BOOK」データベースより

宇江佐真理さんは、人気シリーズ『髪結い伊三次捕物余話』や『雷桜』などで何度も直木賞候補に挙げられている有名な時代小説作家です。この宇江佐真理さんが、得意の江戸の人情と食文化をミックスさせた傑作がこれ。

表題になっている「卵のふわふわ」は、煮たてたすまし汁に砂糖を少し入れた卵を落として七味をかけた料理。空鍋に少し味噌を焦がして冷や飯と青菜を入れただけの「水雑炊」、酢醤油にもみ海苔をかけて辛子あえにした「心天(ところてん)」など、シンプルだけれど、思わず食べてみたくなる江戸の下町情緒溢れる料理が出てきます。程よくミステリーっぽさを交えながら主人公の女性のぶが、偏食ながら少しずつ人生と味の妙を覚えていくストーリーも乙。

時代物らしい人情と江戸情緒、それに惹きつけられるグルメ描写がバランス良く取り混ぜられた一品です。

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