冬におすすめの小説10選!北国、雪、冬休み、クリスマスなどなど、冬ならではの季節感溢れる小説を厳選しました。海外文学や翻訳小説が好きな方にもおすすめ(2021年・最新版)


目次

冬におすすめの小説10冊をご紹介

師走に入って、クリスマス、冬休み、年末、お正月と、忙しくも楽しい冬のシーズンがやってきました。今までもこのブログで、春(花見)秋におすすめのブックリストを紹介してきました。季節感を小説で味わうのが大好きな私にとって、冬はおこもりしながらじっくり読書を楽しめる絶好の季節です。海外文学やじっくり読める大人の小説をセレクト。舞台も、日本は越後から信州、北海道の雪国から東京や京都の都会の冬、海外では、デンマーク、カナダ、ロシア、ポーランド、韓国とさまざまです。家の中でこたつに入りながら、カフェで温かい紅茶やコーヒーを飲みながら、古今東西あらゆるタイプの冬の中からお好きなものを選んで、ゆっくり楽しんでください。

《日本の名作編》

『雪国』 川端 康成

無為徒食の男、島村は、駒子に会うために雪国の温泉場を再訪した。駒子はいいなずけと噂される好きでもない男の療養費のために芸者をしている。初夏の一夜以来、久々に会えた島村に駒子は一途な情熱を注ぐが、島村にとって駒子はあくまで芸者。島村は雪国への汽車で会った女、葉子にも興味を抱いていて…。「無為の孤独」を非情に守る男と、男に思いを寄せる女の純情。人生の悲哀を描いた著者中期の代表作。(「BOOK」データベースより)

《国境の長いトンネルを抜けると雪国であった》冒頭の文章が、日本で最も有名な小説なのではないでしょうか。しかし、冒頭の文章を知ってるだけで終わらせるのは勿体無い。深い雪に覆われた英t御湯沢の風情と、何よりも研ぎ澄まされたようで温もりも感じる美しい川端文学の文章を、寒い寒い冬の最中だからこそ味わってほしい作品です。

『北』幸田文

幼くして母を亡くし、継母と文筆家の父に育てられた才気煥発な娘あそぎ。そのまっすぐな気性は時に愛され、時に人を傷つける。夫婦の軋み、婚家の没落、夫の病―著者・幸田文自身を彷彿とさせる女性の波乱の半生を、彼女を取り巻く人々とのつながりの中でこまやかに描きあげた長編小説。(「BOOK」データベースより)

幸田文(こうだあや)は、有名な幸田露伴の次女で、随筆や小説で読売文学賞、女流文学賞など数々の文学賞を受賞しています。江戸前のテンポと歯切れの良さ、それでいて捉え所のないような感性や情景を繊細に描き出す独特の文体が、一度ハマるとクセになります。この『北愁』は、主人公の女性「あそぎ」の半生は東京が舞台なのですが、そのいとこである漁師の「順治」を通して、北国の厳しく荒い海の情緒が伝わってきます。言葉や情熱的な関わりがあるわけではない、人生の節目節目でしか接点のない頼りないいとこの関係なのに、そこに人が生きる哀しみやあたたかみが凝縮されています。北国の海の、そして人生の寒さ厳しさを感じながらも、最後はじんわりと心が温まる珠玉の小説です。

『蔵』宮尾登美子

失明という運命と闘い、ひたむきに、華麗に、愛と情熱をつらぬいた女、烈。雪ふかき新潟の酒造家を舞台に、生きる哀しみと喜びを全身全霊で描きつくした宮尾文学畢生の傑作。(「BOOK」データベースより)

宮尾登美子さんの作品は、時代性とドラマ性が合わさって映像化にぴったりですが、こちらも1995年に浅野ゆう子主演で映画化された他、松たか子主演のドラマ化でも話題になった有名な作品です。雪国の造り酒屋という舞台が、冬に読むにはぴったり。極寒の北国の深い深い雪をも溶かすような、主人公の女性とその家族たちの愛と情熱の「熱さ」を感じてください。

書評はこちら

海外文学編》

『冬の物語』 イサク・ディネセン

ナチス占領下のデンマークで書かれ、作家自身がもっとも愛した短篇小説集。北欧の春は華やかに押し寄せ、美しい夏が駆け抜けると、長く厳しい冬がひたすらつづく。ナチス・ドイツ占領下にあった冬の時代、デンマークの人びとの生の営みを、大自然のなかに灯された命の輝きとして描きだす。『アフリカの日々』の作家が物語る力を存分に発揮した作品集。(Amazon商品紹介ページより)

イサク・ディネセンはデンマークの女性小説家。本名はカレン・ブリクセンといい、スウェーデン貴族と結婚した後、イサク・ディネーセン(アイザック・ディネーセン)というペンネームで作品を発表しました。『アフリカの日々』は、第58回アカデミー作品賞を受賞した『愛と哀しみの果て』として映画化された他、『バベットの晩餐会』も映画化されアカデミー賞最優秀外国語賞を受賞しています。今でもデンマークの紙幣には彼女の肖像が印刷されているほど有名な、国民的作家です。この『冬の物語』は、ナチス占領下のデンマークで書かれたというだけあって、長く厳しい北欧の冬での喪失感と抑圧、それに対抗して生きる人々の力強さとユーモアに溢れた短編集です。どれも少し不思議な、おとぎ話や神話のようなテイストがあって、英米やフランス文学とはまた違った世界観が楽しめるのも魅力の一つ。

書評はこちら

⒌『冬の犬』アリステア・マクラウド

舞台は、『灰色の輝ける贈り物』と同じ、スコットランド高地の移民が多く住む、カナダ東端の厳寒の島ケープ・ブレトン。役立たずで力持の金茶色の犬と少年の、猛吹雪の午後の苦い秘密を描く表題作。ただ一度の交わりの記憶を遺して死んだ恋人を胸に、孤島の灯台を黙々と守る一人の女の生涯。白頭鷲の巣近くに住む孤独な「ゲール語民謡最後の歌手」の物語。灰色の大きな犬の伝説を背負った一族の話。人生の美しさと哀しみに満ちた、完璧な宝石のような8篇。(「BOOK」データベースより)

アリステア・マクラウドは、カナダの作家で、代表作の長編『彼方なる歌に耳を澄ませよ』で数々の文学賞を受賞しましたが、短編の名手としても有名です。こちらの『冬の犬』は、同じ短編集『灰色の輝ける贈り物』や『彼方なる歌に耳を澄ませよ』などと同じく、自身の出自でもあるスコットランド系移民の歴史や風土を描いているのがとても印象的。季節は必ずしも冬、というわけではないのですが、表題作も含め、カナダ東端の孤島で生き抜く人々は、いつも長く厳しい冬を背負っています。ハイランダーと呼ばれるスコットランド高地からの移民は、独特の言語や文化を背負った人々。モンゴメリの『赤毛のアン』シリーズや、『小公子』で有名なフランシス・バーネットの隠れた名作『白い人たち』などの、有名な児童文学の背景にあるハイランダーの風土や歴史に想いを馳せるの一興。

書評はこちら

『五月の雪』 クセニヤ・メルニク

同じ飛行機に乗りあわせたサッカー選手からのデートの誘い。疎遠になっていた幼馴染からの二十年ぶりの連絡。アメリカ人に嫁いだ娘と再会する母親。最愛の妻と死別した祖父の思い出話―。かつて強制収容所が置かれたロシア極東の町マガダンで、長くこの地に暮らしてきた家族と、流れ着いた芸術家や元囚人たちの人生が交差する。温かな眼差しと、煌めく細部の描写。米国で注目を集める女性作家による、清新なデビュー短篇集。(「BOOK」データベースより)

クセニア・メルニクは1983年ロシア生まれという新進気鋭の女性作家です。このデビュー短編集で注目され、現在ではアメリカのカリフォルニアに在住し、ドラマの脚本を手掛けたり、大学で講演したりと活躍している話題の若手作家。この『五月の雪』には、作者の出身地であるロシア極東の町マガダンを舞台にした物語が収められていますが、マガダンはもちろん、ロシアに行ったことのない人でも、繊細で具体的な描写を読んでいるうちに、不思議な臨場感を味わえます。温かい場所でくつろぎながら、表題作の通り「五月の雪」が降るような厳寒の地を想像してみてください。

書評はこちら

『すべての、白いものたちの』ハン・ガン

しなないで、しなないでおねがい―その言葉がお守りとなり、彼女の体に宿り、そのおかげで私ではなく彼女がここへやってくることを、考える。自分の生にも死にもよく似ているこの都市へ。うぶぎ、ゆき、つき、こめ、はくさい、ほね…白い光と体温のある方へ―ワルシャワと朝鮮半島をむすぶ、いのちの物語。アジア唯一の国際ブッカー賞作家、新たな代表作。最注目の作家が描く破壊の記憶と、再生への祈り。(「BOOK」データベースより)

ロシアの次は、韓国の新進気鋭女性作家、ハン・ガンの作品を。ハン・ガンは、『菜食主義者』でアジア人初の国際ブッカー賞を受賞した、韓国を代表する作家です。この『すべての、白いものたちの』は、まるで散文詩のような美しく印象的な文章で、白いものの記憶を辿りながら、家族や戦死者の記憶と命の物語を紡いでいます。読んでいるうちに、自分の心の中まで真っ白な雪な降り積もっていくような気持ちに。数時間で読み終えてしまえる作品ですが、いつまでも降り止まない雪景色を見つめるように、ゆっくりと静かに、時間をかけて味わいたい作品です。

書評はこちら

日本の現代作家

『すべての雲は銀の…』村山由佳

恋人由美子の心変わりの相手が兄貴でさえなかったら、ここまで苦しくはなかったのかもしれない。傷心の祐介は、大学生活から逃れるように、信州菅平の宿「かむなび」で働き始める。頑固だが一本筋の通った園主、子連れでワケありの瞳子…。たくましく働く明るさの奥に、誰もが言い知れぬ傷みを抱えていた。宿を整え、厨房を手伝い、動物の世話をする。訪れるのは不登校の少女や寂しい老人、夢を追う花屋の娘たち…。人々との出会い、自然と格闘する日々が、少しずつ祐介を変えていく。一方、瞳子は夫の消息を追ってエジプトへ。もう一度誰かを愛せる日は来るのだろうか―。壊れかけた心にやさしく降りつもる物語。(「BOOK」データベースより)

『星々の舟』で直木賞を受賞した他、映画化もされた『ダブル・ファンタジー』など、数々のヒット作を放つ村山由佳さん。恋人を実の兄に奪われるという傷心を抱えて、信州の山奥の宿で住み込みのバイトを始める主人公。物語は夏休みの人気が無くなった初秋から始まり、雪解けの春まで、ちょうど信州の長い一冬を通しているので、冬に読むにはまさにうってつけの長編小説です。文庫で上下巻に分かれていて結構ボリュームがありますが、テンポよくドラマが進むのと、信州の自然や農業、薪割り、それから宿「かむなび」やそこで行われる結婚式やフラワーコーディネートや陶芸など、村山さんらしいお洒落で繊細な感覚溢れる描写が素敵で、読む者を飽きさせません。青春ものとも言えるし、もっと大人な深い部分もある。ちょっとほろ苦さも混じえながらも、最後には温かみの残る物語になっています。

『太陽の塔』森見登美彦

私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

北国の物語が続きましたが、わざわざ寒い場所に行かなくたって寒さは味わえます。クリスマスたけなわの京都の真ん中で、ひとり勘違いの愛を叫ぶ男、その寒さは極寒の地に負けないかもしれない。森見登美彦節が最大限に生かされたこの小説を読んで、誰もが知ってる違う意味での「寒さ」を感じつつ、大笑いして心と体を温める、というのも楽しい冬の過ごし方の一つです。

書評はこちら

『海猫』谷村志穂

女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。母は許されぬ恋にすべてを懸けた。翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。女三代の愛を描く大河小説、完結篇。島清恋愛文学賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

北海道出身の作家、谷村志穂さんが北海道を舞台に女三代の愛と人生を描いた長編小説。島清恋愛文学賞を受賞し、映画化もされた作品です。ややメロドラマ的なところもありますが、貧しく陰鬱な極寒の漁村という舞台が、またその熱い展開とよく合う。後半は一転して、聖ハリス教会や北海道大学など美しく雅な函館がメイン舞台になるところも良いです。寒さと熱さ、雪の白さと血の赤さ、相反する二つを交互に味わいながら、どっぷりと冬の物語に浸ってください。

Follow me!


よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次
閉じる