2015年公開、アメリカ。監督は『灼熱の魂』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。主演はエミリー・ブラント。2015年にナショナル・ボード・オブ・レビュー賞を受賞した他、トロント映画批評家賞、第88回アカデミー賞などにノミネート、第68回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品された。
く、暗過ぎる、、、いや、もっと暗い映画は他にもあるんだけど、なんかねえ、救いが無いと言うのか、エグ過ぎる。
冒頭にも述べたようにカンヌのコンペティションの他、数々の映画賞にノミネート、しかも以前記事を書いた『灼熱の魂』の名匠ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品ということもあって、鑑賞前の私の期待はかなりアゲアゲ。麻薬戦争を描いたというのも、ソダーバーグ監督の『トラフィック』とか面白かったし、興味があった。しかしながら、最初のシーン、FBIが踏み込んだ先でずらっと壁に並べられた腐乱死体、そして爆破されて捜査官の身体が木っ端微塵に吹き飛ばされるところから始まり、これヤバいやつなんじゃ、、、という一抹の不安が過ぎる。グロテスクなシーンは最初が一番酷かったけど、その後も心理的な圧迫感や恐怖感を最後まで煽るシーンの連続で、ラストももちろんハッピーエンドではなく、深夜に観てしまった私はその夜夢でうなされました。。。
この映画をスリラー映画と評している記事もあって、確かに、心理的な「怖さ」を追求した作品としてはよく出来ている。ただ、この作品がアメリカで高い評価を受けて、実際人気もあって、続編まで制作されている、というのはビックリ、と言うか、アメリカも変わったなあ、と思わされた。アメリカ映画でやたら露悪的な作品はたくさんあるけれど、今まではそれはアメリカ的ユーモアや社会批判とセットで表現されていたように思う。過度なバイオレンスをコミカルにエンターテイメントに消化してしまうそのやり方自体に、賛否両論はあるだろうが、少なくともこんなに救いの無い感じでは無かった。この映画は、心理的スリルを味わうエンターテイメントとしてはよくできているけれど、ユーモアの要素が全く無いし、巨悪が手のつけられ無い巨悪のまま放置されるストーリーからして社会批判性も薄い。こういう作品が批評家だけでなく大衆にもウケること自体、アメリカ社会も病んでいるというのか、行き詰まってるなあ、という感じがしたのだが、、、
唯一、個人的にツボだったのは、俳優のベニチオ・デル・トロの演技。これは良かった。私の大好きな映画『ユージュアル・サスペクツ』で注目され、前述の『トラフィック』でアカデミー賞やベルリン国際映画賞を受賞している。こちらは未見だが『チェ』でもカンヌの男優賞を受賞していた。どことなく古谷一行に似てる気がするけど、プエルトリコ出身の実力派男優ということあって、中南米を舞台にした作品で重要な役所と存在感を発揮する。美形ではないが個性的で印象に残る演技をする、気になる男優さんなのだ。この作品でも彼の存在感は圧巻で、続編の『ボーダーライン・ソルジャーズ・デイ』では主役に抜擢されている。続編、彼の演技が観たくて観る、かなあ、、、多分、観ないな(笑)
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