レビュー・映画 『イン・ザ・カット』


2003年公開、アメリカ映画。『ピアノ・レッスン』で女性監督初のカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した、ジェーン・カンピオン監督の作品。「ピアノ・レッスン」を観たのは高校生の頃だったと記憶しているが、作品に終始一貫して漂うエロティックで甘美で残酷な雰囲気、その映像と音楽の激しさと美しさが強く印象に残っていた。
アメリカでベスト・セラーとなったスザンナ・ムーアの小説を、監督と作家自らが脚本化したサスペンスもので、制作にはニコール・キッドマンも加わった。ラブ・コメ・クイーンとして有名なメグ・ライアンが、大胆なヌードをさらけだし、今までの役柄とはがらりと違う孤独な中年(手前の)女性を演じ、話題となったが、ネットで調べてみると評判はイマイチだった感じ。
ストーリーは、メグ・ライアン演じる女教師が猟奇殺人事件に目撃者として巻き込まれ、事件を捜査中の刑事といつの間にか深い仲に。刑事は、冒頭から主人公が目撃した犯人と同じ刺青をしていることが判明し、魅力的だけど妖しい人物。さらに、孤独な女教師の周りには、数回限りの関係を頼りにストーカー的につきまとう近所に住む男性やら、密かに想いを寄せるスラング訛りの黒人の生徒やら、疑わしい人物がうろうろしている。遂には、主人公が唯一身内として頼りしている異母妹まで惨殺されてしまい、真犯人探しはいよいよクライマックスへ。ストーリーの展開とともに、都会に住む孤独な女性が、危険な性に目覚めていくところが描かれる。
確かにこの作品、サスペンスとしては出来がよろしくない。ストーリー展開、盛り上げ方、クライマックスへの仕掛け、どれも中途半端だ。主人公の心理描写も、感情移入して盛り上げると言うよりは、どこか散漫的な印象を免れない。ハラハラドキドキしないのに、猟奇殺人の現場など、映像は結構ドギツイ。
しかしながら、私はこの作品、嫌いになれない。都会に住む女性の孤独、ニューヨークの病的で危険で疲れた雰囲気がすごくよく出ていると思う。サスペンスとして観たらつまらないけれど、雰囲気に浸るには良い映画。女性らしい感覚に溢れた映像なのだ。
残酷でエロティックなところは「ピアノ・レッスン」に通ずるところがあるが、舞台は植民地時代のニュージーランドの大自然から、喧騒と孤独に膨れ上がったニューヨークの大都会と全く違う。でも、その舞台の生々しさを見事に表現している。
メグ・ライアンの疲れきった女っぷりも中々見ごたえあるし、何よりも、刑事役のマーク・ラファロがセクシー。野蛮でワイルドで、危険な香りがして。武骨さとセクシーさとが入り乱れる感じが、たまりません。私は他の作品は観たことないけれど、これは理屈抜きで女性ファンを惹きつけてしまう男優さんだろう。ちょっとジョニー・ディップっぽいですが、そこから繊細さと母性本能くすぐるところを削って、代わりにワイルド&セクシーさを足した感じ。(わかんなって)思わず力説してしまうほど、イケてました。
やっぱり、作風が好きな監督の作品というのは、話題作以外も楽しめるからいい。『ピアノ・レッスン』も、久し振りに観直したくなった。大人になってから、妻や母になってから観ると、また違う感覚で楽しめそうだ。

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