『マネーの進化史』 ニーアル・ファーガソン


再読本。やっぱり面白い。前回読んだ時は、ロスチャイルドがナポレオン戦争を機にどのように一財産稼いだか、ルイ15世治下のジョン・ローによるミシシッピ・バブルの顛末、日本に代表される福祉国家と戦争国家の結びつき、など、エピソード的な面白さが印象に残った。

今回読んでみて、著者がタイトル通り、ダーウィンの進化論を意識して、マネーの進化史を一連の流れとして描こうとしているところが印象的だった。

すなわち、

銀行の誕生、信用創造   ⇒  債券の誕生  ⇒  株式の誕生

⇒ 保険、デリバティブの誕生 ⇒ 住宅ローンの誕生

と展開していくマネーの歴史である。

もちろん、本当の歴史はこのような一直線の流れになっているわけではないが、保険のリスク論からデリバティブの話になり、其の後、国家政策的にも住宅ローンが拡大されていく展開は、まさにこの本が出版された当時起こった、一連のサブプライム問題を見事に暗示していてすごく納得する。リーマンショック直後に書かれたので、この問題を十分に分析する時間が足りなかったのが、むしろ残念。

グローバル資本主義とチャイメリカを論じた最終章では、第一次世界大戦前のグローバル資本主義と比較しながら、再び同じ経済的な緊張関係と貿易摩擦が起こる危険を暗示している。巻末の解説で、野口悠紀雄氏が

≪世界はまだ「リーマンショック後のニューノーマル」に至っていない。これについてのファーガソンの考えを是非聞いてみたいものだ》

と結んでいるが、私も是非昨今の貿易摩擦問題も含めて著者の卓見を聞いてみたいと思ってしまった。

また、ピケティの『21世紀の資本』でも触れた通り、本書も、文学からの引用が多いことが印象的だった。ピケティもオースティンやバルザックを引用していた通り、19世紀の英仏文学からは学ぶことは多いが、ファーガソンは、ブルガリア出身のノーベル賞作家エリアス・カネッティや、かのアルゼンチンの伝説的作家ボルヘスまで引用していたのはとても新鮮。

ノーベル文学賞を受賞したブルガリア出身のエリアス・カネッティは、インフレが猛威をふるっているフランクフルトで過ごした青春時代を振り返って、こう書いている。

インフレーションは、言葉のもっとも厳密かつ具体的な意味において、群集現象である。・・・インフレーションは、人間たちとかれらの貨幣の諸単位とが互いにもっとも強烈な影響を及ぼしあう、価値喪失の魔女の饗宴と呼ぶことができる。両者が互いに相手を表わし、人間たちは自分たち自身をその貨幣のように悪いものと感じる。そして、この貨幣はますます悪くなる。かれらはみんな、ともに貨幣のなすがままになり、ともに同じように無価値になったと感じる。

やはり、膨大な経済的知識やデータや客観的事実を元に、ある種の歴史的コンセプトやストーリーを発見できる鍵になるのが、文学の持つ力なのではないか、と個人的に感じている。

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