書評・小説 『説得』 ジェーン・オースティン


ジェーン・オースティンは、最近改めて読んで、面白さにハマッている作家の一人である。

この作品、ストーリーはさほど手が込んでいるわけではない。主人公で準男爵の娘であるアン・エリオットは、19歳の頃、海軍軍人のウェントワースと恋に落ちるが、まだ財産も功績も築いていない軍人との結婚を周囲に猛反対され、やむなく結婚をあきらめる。8年後、二人は偶然にも再会し、今ではひとかどの財産を築き世間での評判も申し分無い紳士となったウェントワース大佐と、オールド・ミスとなって高慢ちきな家族の誰からもかえりみられない存在となったアンとの間に、徐々に愛が復活していく・・・

物語の中盤から結末は誰にも予想できるわけだが、それでもページから目を離せない面白さ。何と言っても、キャラクターの描き方と、全編に漂う風刺とユーモアが面白い。主人公の家族は、父親からアンの姉、妹に至るまで、「準男爵」という身分にこの上も無い誇りを感じ、見栄っ張りでナルシストでスノッブな、どうしようもない人物である。特に笑えるのは、アンの妹で、裕福だけれど身分は劣る富農のもとに嫁いでいるメアリーの存在。もうほんと、どうしようもない。自分勝手でひがみっぽく、すぐにヒステリーをおこしたり体調を崩した(と思い込んだ)りし、さらには嫁に行った後も実家の身分の高さにいつまでもこだわっているという、たちのわる~い女。登場人物がしょうもないほど、それを辛辣なユーモアたっぷりに描くオースティンの腕が冴えてくるのである。

それにしても、オースティンの作品は、現代の女性作家に共通してみられるような、風景や生活のディティール描写の細やかさがあまり無い。それが、以前にオースティンを読んだ時にぴんとこなかった原因かもしれない。状況の描写は的確なのだが、例えば、現代の女性作家なら、この時代のドレスや室内の調度品がどうとかこうとか、或いは自然の風景の美しさについてとか、そういうディティールに、とても細かやかで美しい文章を駆使すると思うのだが、オースティンにはそれが無い。ディティール描写に頼らずに、ストーリーテリングといきいきとしたキャラクターや会話によって、読者を引っ張っていくオースティンの作家としての力量はすごいな、と改めて感心した次第である。

イギリスの女性作家って、ほんと、底が知れないと言うか、ブロンテ姉妹もそうなのだが、オースティンにしても、こんな200年も前に書かれた作品で、読者を本気で「笑わせる」ことができるって、ものすごいことだと思う。人類不変の愛や苦悩を真に迫って描くことができれば何百年後でも読者を感動させられる。それは幾多の名作が証明している事実なのだが、、200年後の読者を「笑わせる」というのも、それに劣らずとんでもない偉業だと思うのである。

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