書評・小説 『静かな大地』 池澤夏樹


池澤夏樹さんは、須賀敦子さんの本を通じて知ったという、幸せな連環。どちらかと言うと、長篇小説よりも短篇やエッセイの方が良い。一番好きなのは、詩集のような写真集のようななんとも形容しがたい本『きみが住む星』かもしれない。

池澤夏樹さんの母方の祖先にあたる人物をモデルに、幕末から北海道の開拓にあたった人々とアイヌの人々の歴史が描かれている。池澤夏樹さんの長篇小説は「登場人物が説明しすぎ」なところが玉に瑕なのだが、本作は、主題となっているアイヌ文化の「語り」の雰囲気を意識してなのか、わざと語りの主体や視点が入れ替わったりして、そのあたりがぼやけているのもいい。

「日本が島国の単一民族国家だ、などと言う人は、アイヌ迫害の歴史を知らないのだ」というのをどこかで読んだことがあって、以来、アイヌの歴史についてはどこかで気になっていた。ヘイトだの移民問題だのが話題になる中で、これはただの一片のエピソードに過ぎないのだけれど、考え直すきっかけにはなると思う。この物語自体は、アイヌに与した人物を主人公としているので、アイヌ迫害については事細かに描写されてはいないのだが、開拓した和人サイドの徹底したアイヌ排除ぶり、迫害ぶりには奇妙さすら感じる。

結局、七千万人の和人がわずか三万のアイヌを同胞の列に加えることができなかったのだ。それだけの度量がこの国の民にはなかったのだ。

アイヌの問題、沖縄の問題、在日コリアンや移民の問題…バラバラに見えて、全部つながっているのかもしれない。

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