書評・小説 『書店主フィクリーのものがたり』 ガブリエル・ゼヴィン


本屋マイブームの中、近所の独立系書店を訪れて、試しに買ってみた。2016年本屋大賞の翻訳小説部門第1位らしく、失礼ながら本屋大賞には大して期待していなかったのだが、結果、この本はとても良かった。国内の現代作家には辛い点をつける私、個人的に翻訳部門に点が甘いのか?とも思うが、考えてみれば、そもそも翻訳ものというのは、わざわざ海外で翻訳されている時点で一定淘汰されているわけであり、当たりが多くなる確率は高いに決まっているのである…

島に一軒だけある小さな書店アイランド・ブックスの店主フィクリー。無愛想で変わり者の男やもめが、偶然にも2才の女の子を育てることになり、そこからだんだん世界が広がって、新しい恋が始まって…おとぎ話だけど、オトナの楽しいおとぎ話だ。ストーリーは月並みだが、キャラクターもテンポも良いし、じわっとくる温かさもある。

私は、英文学は好きだが、どうも米文学はあんまり得意じゃなくて、大学時代も、せっかくの柴田元幸氏の講義すらちゃんと出席しなかったりして、今思うとものすごくもったいなあ、と思ったりする。なんというか、米文学作品に多用される「ほら、ウィットがきいてるだろ」的な思わせぶりな会話とかが苦手だったりするのだが、本書では、それもアクが強過ぎず楽しんで読めた。そんな米文学苦手な私だから、本の中に出てくる作品を殆ど全部読んだことないのだが、それでも楽しんで読めるし、本屋に行ったり新しい本を読んでみたい気分にさせられる。

著者は、アメリカでYA(ヤングアダルト)と呼ばれるジャンルの作品を多く書いているようで、これを読んでYA というジャンルにもとても興味が湧いた。YAという響きが日本のライトノベルやティーンノベルを連想させて、どうにも食指が動かなかったのだが、それとは大分違うらしい。現代米文学は苦手でも、モンゴメリ、ワイルダー、オルコット、バーネット、ウェブスターとアメリカ系の少女文学は大好物の私、実はものすごく掘り出し物がある分やなのではないか、と勝手にワクワクしている。

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