『たいようオルガン』
作:荒井良二 出版社:偕成社
溢れる色彩と音楽で、子供の感性や表現力を刺激してくれそうな絵本。
《概要》
太陽がオルガン弾いて朝が来た。ゾウバスくんが朝日の中を出発して、旅をします。畑の丘を越え、街を越え、橋を渡ったり、海を渡ったりしながら、みんなゾウバスに乗ったり降りたり。途中雨が降ってきたり、夕焼けを見たりしながら、ゾウバスの旅は夜まで続きます。
《おすすめタイプ》
男の子でも女の子でも。3歳くらいから、とありますが、1、2歳の子が絵を眺めるだけでも楽しめると思います。
《おすすめポイント》
これも比較的新しい絵本です。作者の荒井良二さんは、山形県出身で日大芸術学部を卒業後、絵本を描き始め、『なぞなぞのたび』でボローニャ国際児童図書展特別賞を受賞、スウェーデンの児童文学賞の他、日本絵本賞、小学館児童出版文化賞など数々の賞を受賞。本書でも日本国際図書評議会(JBBY)賞を受賞しています。
とにかく隅々まで絵を楽しみたい絵本です。ゾウバスが、野原を、砂漠を、街の中を、橋の上を、海を、走る走る。1日の日差しの移ろい、天気の移り変わり、雨の香りや空の色まで五感で感じるように楽しめます。作者の荒井良二さん音楽活動を行っていることも有名ですが、この「たいようオルガン」を元にした合唱曲まであるようです。(Youtubeで視聴できます。こちら)ちょっと、クラシックだと重厚過ぎるというか、もっと軽快で明るいイメージな方が合うような気もしますが、この絵本が音楽を感じさせる、というのはよく分かる気がしますね。ゾウバスとかたいようオルガンといった自由な発想、ふんだんに使われた色彩、手書きの文字、子供の心そのままを表現したような世界で、文字や文章が分からない子供でもスッと入っていけます。
幼児が描いたような朴訥な絵なんだけれど、細部までこだわりがあって、夕焼け、海、雨の灰色、夜、など色彩のトーンが本当に豊かなので、色々な楽しみ方がで切るのも良いところ。ユニークな動物を面白がる子もいれば、砂漠や南国を思わせる風物に興味を覚える子もいるのではないでしょうか。ちなみに、うちの子供は、たこやいかや昆布まで出てくる海辺の道のシーンと、夕焼けのバザールようなシーンの2つがお気に入りです。私が好きなのは、中盤で雨が降ってくるシーン。ぜひ、何度も読んで、あ、こんなのもいる、あんなのもある、と新しい発見をしながら、お気に入りのシーンを探してみてください。
コメント