『おっきょちゃんとかっぱ』
文:長谷川摂子 絵:降矢奈々 出版社:福音館書店
面白さ、冒険、ファンタジーの中に、ちょっぷりヒヤッとした怖さ。夏に読むのにぴったりの絵本です。
《概要》
おっきょちゃんは小さな女の子。裏の川で遊んでいると、カッパのガータロが呼んだ。お祭りのお客さんになれ。水の底のお祭りは楽しくて、おっきょちゃんはすっかり人間の頃のことを忘れてしまいます。でもある日、お人形を見つけてお母さんのことを思い出して、、、
《おすすめタイプ》
絵本には3歳くらいから、とありますが、ストーリー性が高いので、少し大きくなってからの方がおすすめです。5歳くらいから。男の子でも女の子でも。
《おすすめポイント》
どこか日本昔話めいた懐かしい感じの物語ですが、初版1997年と比較的新しい絵本です。長谷川摂子さんと降矢奈々さんのタッグは、もう一つの名作『めっきらもっきらどおんどん』でもお馴染み。
降矢奈々さんの絵がとても素敵。カラフルだけどどぎつくない柔らかな色調と立体感のある生き生きとした線、幻想的な絵は、眺めているだけで心が癒されます。
おっきょちゃんが手土産にきゅうりを持っていくところ、わざわざ浴衣に着替えて言ったのに、水に潜った途端にパンツ一丁になってしまうところ、人間の世界に戻るのに、ガータロと二人で食べた大きなスイカの中に隠れるところ、など、ユーモラスでほっこりするシーンもあれば、河童たちの賑やかなお祭りや、「ちえのすいこさま」に人間に戻る方法を聞きに旅をするところなど、子どもたちがドキドキワクワクする冒険も盛り込まれています。
そして、何と言ってもこの絵本の面白さは、河童や神隠しなど、日本の昔話がもつちょっとヒヤリとする怖さが隠されているところ。一見ひょうきんな風貌の河童が、実は人間の肝をとってしまう怖い妖怪だったり、おっきょちゃんが河童と遊んでいるうちに、自分の家族や家のことをすっかり忘れてしまって人間に戻れなくなってしまったり。こういうヒヤリとした怖さは、ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』に通ずるものがありますね。ただ、この絵本は、本当にこの怖さはさりげなーく触れているので、小さい子どもでも「怖い」とまでは感じないくらいになっているのが良いところ。でも、こういう隠された怖さに子どもはとても敏感です。それが、子どもたちを惹きつける物語の魅力の一つになっていることは間違いありません。
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