2013年、ドイツ・スイス・ポルトガル合作。監督はデンマークの巨匠・ビレ・アウグスト。主演はジェレミー・アイアンズ、その他、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、シャーロット・ランプリングの超豪華キャスト。
ビレ・アウグストと言えば、『ペレ』と『愛の風景』で2回のカンヌ・パルムドールを受賞した巨匠である。ジェレミー・アイアンズとは『愛と精霊の家』と同じタッグだ。『愛と精霊の家』は南アメリカ・チリの女性作家イザベル・アジェンデの原作を映画化したものだったが、今度はスイスの作家パスカル・メルシェのポルトガルを舞台にした原作を映画化。何というか、非常にインターナショナルな監督である。
映画を観ようと思ったきっかけは、原作を読んだからで、「哲学小説」と謳われたパスカル・メルシェのベストセラー小説はとても面白かった。(書評はこちら)
しかし、原作はベストセラー小説と言えど、かなり本格的な哲学色の濃い作品で、ポルトガルの伝統的カトリックのレトリックの否定、ポルトガルの階級社会と現代史、現実社会のパッションとポエジーなどなど、重たくハードな要素をいっぱいに含んでいたので、これをどう映画化するつもり?とやや不安に思いながら観始めたが・・・
結果としては、原作の哲学的要素は潔いほどバッサリと切り捨て、ポルトガルの風土や情緒をたっぷりと味わえるエンタメ作品に仕上がっていた。原作とは程遠いが、これはこれで好きである。映画『異人たちとの夏』の記事でも書いたが、文学作品の映画化では、変に原作のストーリーやコンセプトを忠実に再現しようとするのではなく、いっそ大胆に映像化に舵を切った作品の方が好きである。
残念ながらポルトガルには行ったことが無いのだが、トラムの走る古い町並み、テージョ川、ロシオ広場からの見晴らし・・・美しいリスボンの景色や風情が楽しめる映像で、旅行気分が味わえる。映画のロケ地をめぐっては、『居ながらシネマ』さんというブログがとても面白くて参考になるので、興味がある方はぜひこちらもチェックしてください。
キャストもまたいい。ジェレミー・アイアンズは私の中ではイギリスのイケおじというイメージなので、ちょっと原作のスイスの偏屈な堅物教授を演じるにはかっこ良すぎるだろ・・・という気がしなくもないのだが(笑)しかし、まあ主人公の映っている時間が長いので、本当に小汚いおじさんだったら絵的に辛いであろうからやむなし。それにつけても、他のキャストはかなりチョイ役出演なのに、ジャック・ヒューストン、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリンにクリストファー・リーと、ものすごい面子を惜しげもなく使っている。そして、シャーロット・ランプリングなんて、出演時間の割にすごい存在感を感じさせていてさすがである。
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