ヴェネツィア、ベネチア、ヴェニス、ベニス。古来から、水の都は様々な芸術家を虜にしてきました。「ヴェネツィア・ベネチア・ヴェニス・ベニスをよりよく知るためにおすすめの本6冊を厳選・旅行に行く前に、旅行に行けない時にも(ヴェネツィアブックリスト日本人作家編)」の記事で、おすすめ本を紹介しましたが、「絵になる」ヴェネツィアは、文学だけでなく映画でも多く題材として取り扱われています。今回は「ヴェネツィアブックリスト(映画編)」として、おすすめ映画リストをご紹介。言わずと知れた名作や超定番の作品から、エンタメ、歴史、そして現在ではかなり入手困難な古きマニア作品まで様々です。
<超定番編>
1. 『ベニスに死す』
1971年製作/131分/G/イタリア・フランス合作
原題:Morte a Venezia
配給:クレストインターナショナル
日本初公開:1971年10月2日
巨匠ルキノ・ビスコンティの「山猫」と並ぶ代表作で、ノーベル賞作家トーマス・マンの同名小説を原作に、作曲家グスタフの美少年への心酔と老いの苦しみを描いた。「地獄に堕ちた勇者ども」に続いて撮られた、ドイツ3部作の2作目にあたる。療養のためベネチアにやってきたドイツの老作曲家アシェンバッハは、ホテルで少年タジオを見かける。一目で少年の美しさの虜になり、彼の姿を見つけるだけで喜びを感じ始める。全編に流れるのは、アッシェンバッハのモデルになったマーラーの「交響曲第3、5番」。2011年には製作40周年を記念し、ニュープリント版でリバイバル上映された。(映画.com より)
説明の必要が無いくらい超有名作品。「ベニスの死す」と言えば、トーマス・マンの原作より、こちらの映画を思い浮かべる日本人の方がはるかに多いのでは。音楽、映像美と共に、絶世の美少年タジオを演じたビョルン・アンドルセンにも注目。この映画を観てより深く知りたくなった方は、トーマス・マンの原作や、海野弘『書斎の博物誌』なども是非参考にしてみてください。
2.『旅情』
1955年製作/100分/PG12/イギリス
原題:Summertime
配給:UA=松竹
ブロードウェイでヒットしたアーサー・ローレンツの戯曲『カッコー鳥の時節』から「ホブスンの婿選び」のデイヴィッド・リーンがヴェニスにロケイションして監督した一九五五年度作品。脚色はデイヴィッド・リーンと小説家のH・E・ベイツが協力して行った。主演は「アフリカの女王」のキャサリン・ヘップバーンで、「愛の泉」のロッサノ・ブラッツィが共演。(映画.comより)
キャサリン・ヘップバーンの主演で切ない大人の恋を描く、『アラビアのロレンス』のデヴィッド・リーン監督の出世作。水の都・ベニスへバカンスにやって来たキャリアウーマンが、そこで知り合った中年紳士と恋に落ちる。(Amazon 商品情報より)
こちらもヴェネツィアと言えば必ず取り上げられるほど有名な作品。ロマンチックな愛の舞台としてのヴェネツィアが楽しめます。アメリカの大衆的な「イタリア」そして「ヴェネツィア」のイメージを代弁しています。
3.『リトル・ロマンス』
1979年製作/109分/アメリカ
原題:A Little Romance
配給:東宝東和
「スティング」のジョージ・ロイ・ヒル監督による青春ロマンスで、ダイアン・レインの映画デビュー作。ベルサイユ宮殿で出会ったフランス人の少年ダニエルとアメリカ人の少女ローレン。2人はたちまち恋に落ちるが、ローレンはアメリカに帰国しなければならない。彼らは謎の老人から聞いた「ベネチアにあるためいきの橋の下で、日没の瞬間にキスした恋人たちは永遠に結ばれる」という伝説を実行しようと、ベネチアへと旅立つが……。(映画.comより)
『旅情』が大人の恋愛ドラマなら、こちらは青春の恋愛ドラマ。有名な「ためいき橋」から始まり、ヴェネツィアの有名スポットを旅行番組のように次々と楽しめます。でも、本当は「ためいき橋」の名前の由来はそんなロマンチックなものじゃなかったんですよねえ、、、気になる方は宮下規久朗の『ヴェネツィア 美の都の一千年』をご参照あれ。
<エンタメ・アクション編>
4.『ツーリスト』
2011年製作/103分/G/アメリカ・フランス合作
原題:The Tourist
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップが初共演を果たしたミステリードラマ。「善き人のためのソナタ」のドイツ人監督フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが、フランス映画「アントニー・ジマー」(2005)をリメイクする。イタリアへ傷心旅行にやって来たアメリカ人のフランクは、ナゾの美女エリーズと運命的な出会いを果たす。しかし、彼女と恋に落ちたフランクは、いつしか巨大な陰謀に巻き込まれていく。(「映画.com」より)
2大スターが夢の共演、という全てが豪華絢爛なミステリー・エンタメ。ヴェネツィアの最高級ホテル・ダニエリをロケ地にしたことでも話題となりました。ホテル・ダニエリについての記事はこちらを参照。
5.『007 カジノ・ロワイヤル』
2006年製作/144分/イギリス・アメリカ・チェコ合作
原題:Casino Royale
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
6代目ジェームズ・ボンドにシリーズ初となる金髪碧眼のダニエル・クレイグ(「ミュンヘン」「レイヤー・ケーキ」)を迎え、イアン・フレミングによる最初の原作を元にジェームズ・ボンドが007になるまでを描くシリーズ第21作。脚本には「クラッシュ」「父親たちの星条旗」のポール・ハギスが参加。監督は第17作「ゴールデンアイ」以来の再登板となったマーティン・キャンベル。(「映画.com」より)
今までのクールで甘いボンドとは一味違う、ダニエル・クレイグの新生ボンドが話題となったこの作品。まだまだ熱い感情剥き出しの若きボンドが愛した女性が悲しい最期を遂げるのがこのヴェネツィア。水と死の都ヴェネツィアfを暗示するようなクライマックス・シーンがとても印象的です。
6. 『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』
1989年製作/127分/アメリカ
原題:Indiana Jones and the Last Crusade
配給:UIP
スティーブン・スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス製作総指揮、ハリソン・フォード主演によるアドベンチャー映画の金字塔「インディ・ジョーンズ」のシリーズ第3作。1938年。考古学者インディは富豪ドノヴァンから、キリストの血を受けた聖杯の捜索を依頼される。最初は渋っていたインディだったが、行方不明になったという前任者が自分の父ヘンリーだと知り引き受けることに。ベネチアで父の同僚シュナイダー博士と合流したインディは、父から託された聖杯日誌を頼りに、聖杯の在り処を示す手掛かりをつかむが……。インディの父ヘンリーを名優ショーン・コネリー、少年時代のインディをリバー・フェニックスが演じた。第62回アカデミー賞で音響効果賞を受賞。(「映画.com」より)
主演のハリソン・フォード顔負け、お父ちゃんショーン・コネリーがいい味出している三部作最終編。ショーン・コネリー扮するヘンリーが失踪したヴェネツィアで、図書館として登場するのが有名な「聖バルナバ教会」です。
7.『インフェルノ』
2016年製作/121分/G/アメリカ
原題:Inferno
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ダン・ブラウン原作の世界的ヒット作「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続き、トム・ハンクスが三度、ハーバード大学教授の ロバート・ラングドンに扮したシリーズ第3弾。ハーバード大学の宗教象徴学者ラングドン教授は、数日分の記憶を失った状態で、フィレンツェの病院で目を覚ます。謎の襲撃者に狙われたラングドンは、美しい女医シエナ・ブルックスに助けられて病院を脱出。何者かから追われる身となったラングドンとシエナは、生物学者ゾブリストが人類増加問題の解決策として恐ろしい伝染病を世界に広めようとしていることを知る。そしてゾブリストが詩人ダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」になぞらえて計画を実行していることに気づき、阻止するべく奔走するが……。ロン・ハワード監督と主演のハンクスが続投するほか、ラングドンと共に謎を追う女医シエナ役を「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズが演じる。(「映画.com」より)
ダンテの『神曲』を巡理、フィレンツエやイスタンブールなど、都市の美しい景観と由緒が楽しめる作品ですが、ヴェネツィアも重要な舞台の一つ。サン・マルコ寺院の「クァドリガ」が、十字軍の際にコンスタンティノープルから持ち帰った戦利品であった、という史実がキーとなるあたり、塩野七生さんの『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年』を併せて読むと、面白さ倍増です。
<歴史編>
8.『ヴェニスの商人』
2004年製作/130分/アメリカ・イタリア・ルクセンブルク・イギリス合作
原題:The Merchant of Venice
配給:アートポート、東京テアトル
シェイクスピアが執筆した37の戯曲の中で最も人気が高い『ヴェニスの商人』を、「イル・ポスティーノ」のマイケル・ラドフォード監督が映画化。アカデミー賞俳優アル・パチーノ、ジェレミー・アイアインズに加えジョセフ・ファインズら実力派キャストがそろい、水の都ヴェニスを舞台に鮮やかな人間模様を繰り広げる。(「映画.com」より)
9.『カサノバ』
2005年製作/108分/アメリカ
原題:Casanova
配給:ブエナビスタ
アラン・ドロン、マルチェロ・マストロヤンニ、ドナルド・サザーランドなど、過去に様々なスターが演じてきた史上最も有名なプレイボーイ、ジャコモ・カサノバ役に「ブロークバック・マウンテン」のヒース・レジャーが挑んだ恋愛コメディ。監督は「ショコラ」「サイダーハウス・ルール」の名匠ラッセ・ハルストレム。シエナ・ミラー、ジェレミー・アイアンズ、レナ・オリンらが共演。(「映画.com」より)
ヴェネツィア出身の稀代の色事師カサノバを主人公にした映画は、フェリーニの作品が有名で、2020年にはオマージュ作品『カサノバ 最後の恋』も公開されています。フェリーニ作品がスタジオ・ロケ中心に対して、ヴェネツィア・ロケを楽しむなら、こちらの作品がおすすめ。
10.『夏の嵐』
1954年製作/119分/イタリア
原題:Senso
オペラ的な要素とリアリズムを融合した絢爛豪華な時代絵巻。19世紀後半、オーストリア支配下のベネチアで出会った伯爵夫人と美しい青年将校。青年に恋をした伯爵夫人は、彼のために軍資金を横流しする。一途な愛を貫く伯爵夫人を演じたアリダ・バリは、ハリウッドでも活躍し、「第三の男」の恋人役で知られる。青年将校役は、ルキノ・ビスコンティの初監督作「郵便配達は二度ベルを鳴らす」で流れ者の主人公を演じたマッシモ・ジロッティ。
<こだわり編>
11.『世界殺人公社』
1969年製作/イギリス
原題:The Assassination Bureau
配給:パラマウント
イギリスの作家ジャック・ロンドンの小説をベースにマイケル・レルフが脚本を書き、「カーツーム」のバジル・ディアデンが監督したコミカルなタッチの冒険劇。撮影はジェフリー・アンスワース、音楽はロン・グレイナーが担当した。美術監督はロイ・スミス、フランク・ホワイト、編集はテディ・ダーバスの担当。出演は「脱走山脈」のオリヴァー・リード、テレビ出身のダイアナ・リグ、「特攻大作戦」のテリー・サヴァラス、「ロード・ジム」のクルト・ユルゲンスほか。製作は脚本執筆しているマイケル・レルフ。(「映画.com」より)
12.『ベニスで恋して』
2000年製作/115分/イタリア・スイス合作
原題:Pane e Tulipani
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
家族のために人生を捧げてきた主婦がベニスでの一人旅でときめく心を取り戻すロマンティック・コメディ。監督・脚本はシルヴィオ・ソルディーニ。撮影はルカ・ビガッツィ。出演はリーチャ・マリェッタ、「永遠の一日」のブルーノ・ガンツほか。2000年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞9部門、シルヴァー・リボン賞5部門、ゴールデン・グローヴ賞2部門、ゴールデンCIAK賞受賞。(「映画.com」より)
<マニア編>
13.『ルー・サロメ 善悪の彼岸』
1977年製作/127分/イタリア・フランス・西ドイツ合作
原題:Al Di La Del Bene e Del Male/Beyond Good and Evil
配給:彩プロ
19世紀後半、文化史に多大な影響を与えた女傑ルー・サロメと大哲学者フリードリッヒ・ニーチェ、さらに彼の弟子パウル・レーとの愛と思想の妄執を描く。日本では1985年に「善悪の彼岸」のタイトルで116分の英語版が公開されたが、40箇所以上が修正された。今回のイタリア語版・ノーカット版では修正箇所は4箇所のみで、数多くの場面が復元された。監督は「愛の嵐」のリリアーナ・カヴァーニ。出演はドミニク・サンダ、エルランド・ヨセフソン。(「映画.com」より)
14.『ベネチタ事件』
1966年製作/アメリカ
原題:The Venetian Affair
配給:タイヘイフィルム
ヘレン・マッキネスのスパイ小説をジャック・ニューマンが脚色、ジェリー・ソープが監督した。撮影はミルトン・クラスナー、音楽はラロ・シフリンが担当した。出演はロバート・ヴォーン、エルケ・ソマー、フェリシア・ファー、カール・ベーム、ルチアナ・パルッツィ、ボリス・カーロフほか。製作はジェリー・ソープ、ジャック・ニューマン。(「映画.com」より)
「ベネチアン」を「ベネチタ」と邦訳してしまうセンスに、ものすごく昭和を感じてしまいますが、監督のジェリー・ソープは、有名な「監獄ロック」などを撮った巨匠リチャード・ソープの息子で、60年代の世界的なスパイ映画ブームの中作られた、知る人ぞ知る名作です。
15.『ベニスの出来事』
1966年製作/アメリカ
原題:Three Bites of the Apple
配給:MGM
「ガールハント」のジョージ・ウェルズの脚本を「青空のデイト」のアルヴィン・ガンツァーが製作・監督した。撮影は「太陽が目にしみる」のガボール・ポガニー、音楽はエディ・マンソンが担当。出演は「0011ナポレオン・ソロ 消えた相棒」のデイヴィッド・マッカラム、「魂のジュリエッタ」のシルヴァ・コシナ、ドメニコ・モドゥーニョほか。(「映画.com」より)
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