レビュー・映画 『麗しのサブリナ』


1954年公開、アメリカ。監督は名匠ビリー・ワイルダー。主演はオードリー・ヘプバーン、お相手はハンフリー・ボガード。衣装を手がけたのはイーディス・ヘッドで、その年のアカデミー衣装デザイン賞を受賞した。アカデミーの5部門にノミネート、ゴールデングローブ脚本賞を受賞した他、数々の映画賞を受賞している。1995年には、ジュリア・オーモンドとハリソン・フォード主演で『サブリナ』というリメイク作品もつくられた。

この超超有名作品を観たのは、あいもかわらず、ロングアイランドが舞台の作品だったからである。と言っても、ロングアイランドにあるという設定のララビー家のお屋敷は、ビバリーヒルズのパラマウント社長の邸宅で撮影したと言うし、名物のロングアイランド鉄道のグレンコーブ駅が出てくる以外は、とりたててロングアイランドマニアに訴えるところはあまりない。(ロングアイランドのお屋敷に比べたらビバリーヒルズなど「おなじタイプの家がずらりと並ぶ建て売り住宅街に見える」とのたもうた『ゴールド・コースト』のジョン・サッターが聞いたら嘆くに違いない)

ストーリーは・・・あんまり説明するほど意味があると思えない(笑)まあ、とにかく、一から十までオードリー・ヘプバーンの魅力を楽しむための映画である。色々賞も受賞しているようだが、ビリー・ワイルダーの作品なら他にももっと良いのがいくらでもある。ボガードもちょっと適役なのか?うーん?という感じがしたのでググってみたら、元々予定されていたケーリー・グラントが撮影1週間前に断ったために急遽担ぎ出されたらしい、と読んで納得。まあ、とにかく『ローマの休日』に続け!と、ヘプバーンちゃんのために撮られた映画なのである。

で、そのヘプバーンの魅力を最大限に引き出した衣装を担当したのが、『ローマの休日』と同じくイーディス・ヘッドである。ただし、実際には、有名なサブリナドレスは、イーディス・ヘッドではなくジバンシイがデザインしたものらしい。オードリー・ヘプバーン×ジバンシイという魅惑的なコラボレーションが始まった記念的作品とも言えるだろう。

サブリナドレスと並んで有名なのは、映画の終盤で出てくる黒色の「サブリナパンツ」である。このくるぶし丈のパンツは、今でもその名称が残っているくらい有名だから、わざわざ説明するまでもないだろう。ボガード演じるライナスの豪奢な社長室に、黒のニットと黒のサブリナパンツで現れ、カフェ・エプロンをつけてパリ仕込の料理の腕前をふるおうとするサブリナ。結局、料理の腕前は披露されず、「このシチュエーション意味あんのか?」と思いきや、ただただオードリーの美しい立ち姿を愛でるために考えられたシーンなのだ。

全身真っ黒ずくめのこの衣装がどうしてこんなにも素敵なのか。これがオードリー・ヘプバーンにしかできない凄技なのだ。この衣装でこの髪型で素敵だと思わせられるとしたら、ほかに誰がいよう?ふと、ジーン・セバーグなら・・・と脳裏をよぎったが、やはり、さすがにここまで色気のない衣装では、ジーン・セバーグだと、ただのやんちゃな泥棒みたいになってしまいそうだ。やっぱりここは、ヘプバーンである。

こんな黒子にしか見えない衣装で、エレガントさを醸し出せるのは、彼女しかいない。何と言っても、彼女のプロポーションと姿勢の美しさである。森瑤子さんの『美女たちの神話』という本に、オードリー・ヘプバーンの章があって、彼女が小さい頃からクラシック・バレエであの姿勢を磨いたと読んだが、オードリー・ファッションで一番重要なのは、そこだったのではないか、と思ってしまう。それくらい、あの手足のすっきりとしたプロポーション、すっと上げた美しい首筋、は卓越したものがある。今では、アンドロイドかCGかと見紛うような8身頭のモデルさんみたいな女優も珍しくないが、ヘプバーンの同時代のハリウッド女優達と比べたら、オードリーのプロポーションがどれだけずば抜けていたか分かるというものである。(同年公開の『雨の朝パリに死す』のエリザベス・テーラーを見よ)

何でも、世界に跋扈するK-POPアイドルは、なによりもまず、スタイルとプロポーションで選ぶのだそうである。「顔は整形と化粧でなんとでもなるが、スタイルはそうはいかない」とのこと。言われてみればなるほど、と思う。「姿勢とプロポーションは誤魔化せない」というデューク更家のような格言をもって、この映画のレビューを終わりたい。

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