書評・エッセイ 『ラオスにいったいなにがあるというんですか?』 村上 春樹


村上春樹の旅行エッセイと言えば、大好きな『遠い太鼓』をはじめ、『辺境・近境』『雨天炎天』など、思わず全てを投げ出して旅に出たくなってしまうので、出産後には意図的に避けていたのだが…この本は、雑誌のコラム的なものを纏めたということもあり、かなりマイルドな、ややありふれた感さえあるフツーの旅行エッセイでした(笑)

でも、さすが美食家の村上春樹氏、話題の街ポートランドやトスカーナのワイナリー巡りなど、かなりフツーのエッセイながらも、やっぱり美味しそうでそそられる。私は、村上春樹の小説に出てくるなにげない食事シーンが大好きで、特に、主人公が食べるサンドイッチが格別に美味しそうで、サンドイッチが大して好きでもないのに思わず食べたくなってしまうのを常々不思議に思っていたのだが、『遠い太鼓』を読んで、村上春樹氏の美食家ぶりに納得したのである。 『遠い太鼓』があまりに好きだったので、今回、それを踏まえて20年ぶりのギリシア再訪紀行があるのだが、そちらの覇気の無さにはなんとなくガッカリしてしまうのだが…私としては、小説も、『ダンス・ダンス・ダンス』とか『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』とか、昔の作品の方が勢いがあって好きで、最近のはちょっと物足りないんだなあ。。。 などと言いつつ、村上春樹の文章の魅力には勝てず、『1Q84』も一気読みしたし、この本も、アイスランドやフィンランドといったちょっと変わった場所のエッセイもそれなりに面白く読み、さすが著者の真の愛情溢れるニューヨークのジャズバー巡りやボストン野球エピソードなど、ジャズにも野球にも微塵の興味もないくせに行ってみたくなる私であった。

ということで、多分、そろそろ『騎士団長殺し』も購入してしまうことでしょう…

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