映画・レビュー 『万引き家族』


2018年公開、日本。是枝裕和監督が、第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、日本人監督作品としては21年ぶりの受賞として話題になった。翌年の日本アカデミー賞では、作品賞から脚本賞、主演助演男女優賞に至るまで、文字通り各賞を総ナメした。主演はリリー・フランキーと安藤サクラ。

時代遅れの映画ばかり観ている私にしては微妙に新しく、しかし、話題としてはかなり今更感のあるこちらの映画、やっと観てみました(笑)

当時、受賞に際し首相からコメントが無かったのは、社会に居場所の無い子供たち、セーフティネットの働かない人たちを描いたこの作品が、暗に現代の日本社会を批判しているからではないか、とか、色々取り沙汰されていたのを記憶している。それで少し構えて観てしまったのだが、日本の格差とか虐待とかについての社会批判、はあまり感じなかった。

と言うより、この作品が秘めているものは、もっとドラスティックにアナーキーなものなのではないかと思う。映画を最後まで観た者がまず何より驚くのは、この家族の全員に血の繋がりが全くない、というその事実だろう。彼らは全員、血縁とか社会的な繋がりから弾き飛ばされてしまっている人たちだ。血縁である家族も、地域的なコミュニティも、ある意味で否定されている。

そんな既存の繋がりから弾き飛ばされてしまった人たちが集まって、どこか温かみのある擬似家族を形成している。擬似家族の繋がりは固いようで脆い。樹木希林演じるおばあちゃんの死で、子供の万引き事件の露呈で、それから色々な芋づる式に色々な事実が明るみに出て、あっけなく崩壊する。

あの繋がりが本物だったのか、偽物だったのか、そこに答えはない。でも、本物であるってそもそもなんなのか。りんのように虐待され、はたまた亜紀のように存在を黙殺されてきた子供は、血の繋がった親たちとは「本物の家族」だと言えるのだろうか。りんが親元に戻り、無事に保護されて「大好物のハンバーグを食べました」という母親のコメントでお決まりの大円団をマスコミが報道するシーンは、とりわけ皮肉めいて、やるせない気持ちにさせられる。

テーマの描き方も見事だが、それをさらに作品として上質なものに昇華させているのは、何と言っても役者の演技だ。リリー・フランキーや樹木希林はもちろん、亜紀役の松岡茉優や子役に至るまで、家族全員役どころが素晴らしい。家族の誰一人欠けても、ダメだ、という感じがするけれど、強いて一番大事、と挙げるなら、やっぱり母親役の安藤サクラだろう。彼女の演技については、もう聞き飽きるほど絶賛されているけれど、それでもすごいものはやっぱりすごい。

なんでも、この映画の作成中のタイトルは『声に出して呼んで』というものだったそうだ。まあ、『万引き家族』の方がインパクトがあって興業的にもいいのかもしれないけど。とにかく、消え去ったタイトルに込められた思いは、最後の安藤サクラの取り調べシーンで、彼女の演技によって見事に表現されているのだから。

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