『ピーターのいす』
作:E=ジャック=キーツ 訳:きじま はじめ 出版社:偕成社
初めて弟妹ができた子供に是非読んで欲しい。コラージュによる色彩、質感も子供の目を惹きます。
《概要》
妹が生まれたばかりのピーターはなんだか面白くない。お母さんから静かにして、と言われたり、自分の食堂いすやゆりかごもピンク色に塗られてしまったり。ピーターは、まだ残っている小さないすを持って犬のウィリーと家出しようと思います。おや!でも、いすが小さ過ぎてピーターは座れません。大きくなったピーターは、お家に帰って、お父さんと一緒にいすをピンクに塗るお手伝いをしてあげるのでした。
《おすすめタイプ》
2歳後半から3歳くらいから。弟妹ができた子供にはぴったりです。下の子供にも、お兄ちゃんお姉ちゃんの気持ちが想像できるような歳になってから、読んであげたい。
《おすすめポイント》
小さな子供にとって、下の弟や妹が生まれる、というのは短い人生で最大の出来事です。とっても嬉しいけれど、今まで独り占めしていたお母さんやお父さんの愛情が奪われてしまったように感じたり、心は複雑。そんな初めてお兄ちゃんお姉ちゃんになった子供を描いた絵本もたくさんありますよね。瀧村有子さん作の『ちょっとだけ』なんて名作もあります。
この『ピーターのいす』は、まだ自分でもはっきり言葉にはできないくらい小さなお兄ちゃんお姉ちゃんたちの心に寄り添うように、その心情を言葉では語り過ぎずに描いているところがとても良いんです。
得意になって積み木を作っていたら注意されてしまったり(今までだったらお母さんに褒めてもらえていたかもしれません)、自分の食堂いすやゆりかごが妹用にピンク色に塗られていたり(もう見向きもしなかったけれど、断りもなく取り上げられたような気持ちになってしまったり)。なんとなく面白くなくて、もう使えないくらい小さないすと自分の赤ちゃんの写真を持って家出してやる!って気持ちになってしまう。でも、だからと言って深刻なわけではなくて、隠れてお母さんをびっくりさせるのが成功したら大満足!自分はいすに座れないくらい大きくなっているし、お母さんをびっくりさせられるくらい成長したんだ!と、気持ちが切り替わるところなんかも、小さな子供の心情をよく捉えているなあ、と思います。
この絵本はコラージュ(貼り絵)でできていて、色彩や質感がちょっと変わっているのも子供の目を引きつけます。レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』などでも触れたように、特に小さい子供には、アニメ的な絵だけではなくて、質感があるものがウケます。綺麗なアニメーションやどぎつい色彩に取り囲まれている現代っ子こそ、絵本を通じて、色々な色調や質感の絵に触れさせたいですね。
E=ジャック=キーツは、ニューヨークの下町生まれの絵本作家です。ピーターも有色人種で下町育ち。他のピーターシリーズでは、もっとニューヨークの下町の様子がはっきりと出てくるものもあります。自分とは違う国、人種、街の様子など、小さな子供の目は敏感に様子を捉え、印象に残しているものです。まずは絵本から、多様な世界を体験させてあげたいなあ、と思い、本を選ぶようにしています。
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