書評・小説 『暗いブティック通り』 パトリック・モディアノ


ノーベル文学賞を受賞したフランスの作家パトリック・モディアノの作品。本作品は、フランスの有名な文学賞ゴンクール賞を受賞している。モディアノの作品は読んだことがなかったが、『世界の8大文学賞』で紹介されていて興味が湧いた。その名前の響きが気になる通り、有名な画家モディリアーニの遠縁にあたるそうだ。

私立探偵所に勤める記憶を無くした男が主人公。タイトルが暗示するように、本当にか細い手がかりをたどりながら自分が何者なのか、どこから来たのか、薄暗い道を手探りで彷徨っていくような物語だ。『世界の8大文学賞』で、同じゴンクール賞受賞のマルグリット・デュラス『愛人』と比較して、《デュラスの露光過多の文学だと言いましたけど、モディアノには光が少ないですね》と語られていたのが印象的だった。薄暗い不明瞭なトーンは、主人公の記憶や過去が明らかになり一応の決着を見せても、なお続く。「現代のマルセル・プルースト」と賞された推理小説的な緻密な構成とディティール描写のビビッドさにも関わらず、読者はずっと、どこか不安定な所在なさを味わうことになる。

続けて読んだモディアニの『家族手帖』と同じく、主人公の失われた記憶と物語の背後には、第二次大戦や移民の暗い歴史が見え隠れし、国籍やルーツについての社会的不安が、記憶や存在そのものの不確かさと結びついて揺れ動いている。このあたりがモディアノがノーベル賞を受賞した理由だろう。

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