『スナックちどり』 よしもとばなな


よしもとばななは、ものすごく思い入れがある作家というわけではないけれど、思春期の通過儀礼的に、旬の頃の作品は結構読んだ。その頃一番好きだったのは、『白河夜船』かな。

大人になってからは、『世界の旅』シリーズや『デッドエンドの思い出』『まぼろしハワイ』などをちょいちょい読んでいるけど、そんなに印象深い作品はない。

でも、なんかあまり頭を使いたくないときには急に読みたくなって、やっぱり読んでしまう。すごく感動したりはしないけど、江國香織みたいに最新作になればなるほどガッカリ感が出たりもせず、安定したよしもとばななワールドが楽しめる。

とは言え、よしもとばななを読んだのは5年ぶりくらいではないだろうか。

ストーリーも知らずに手に取ったこの作品だが、中々良かった。

よしもとばななは、なんというか、永遠の「女子」感があるなあ、というのが第一印象。もちろん、よしもとばななさんが母親になってるのも知ってるし、そもそも登場人物もおばちゃん手前のアラフォー女性2人だし、読んでる私は寒空の下自転車3人乗りで近所のスーパーに通ってるような母ちゃん生活だけど…だけど、やっぱり女子は女子なのである。

その永遠の女子っぽさが、甘く物足りない気がする時もあるのだけれど、『スナックちどり』は、なぜかスッと心に入ってきて楽しんで読めた。あとがきにあるように、ばななさんが偉大な(きっと時として偉大過ぎたであろう)父親の死を経験した後でなお、素直に自分の世界を肯定して書いた作品だからかもしれない。

面白かったのは、物語の後半で、主人公が従姉妹のちどりと、一晩だけビアン的関係をもってしまうくだりがあり、そのことについてのばななさん自身のあとがき

《私が言いたかったことは女どうしだからどうということではなく、人がほんとうに弱っているときには変な磁場ができて異様なことも起こりうるし、そんなことも時の流れのなかで自然に昇華されていくという「80年代の教え」のようなものである》

なるほど。思いっきり「バブル世代」のばななさんにとっては「80年代の教え」であることは、一回り以上年下の私には、「世紀末90年代の教え」であるかのように感じる。世代の差を感じると同時に、結局、15歳くらいの年の差なんてあんまり関係ないような年齢になってきたんだなあ、という変な感慨にふけってしまったのでした(笑)

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