秋におすすめの小説6選!読書の秋に読みたい、季節感を感じられる小説を厳選。海外文学や翻訳小説が好きな方にもおすすめ


まだまだ日中の日差しは強いですが、朝晩の涼しさや、夕暮れの早さといつの間にか変わった虫の鳴き声に、やっと秋が感じられる季節になりました。私は、季節を感じながらそれに合う小説を読むのが好きなんですが、秋の小説を楽しみ始める時期が年々遅くなり、浸る暇もなく冬が始まってしまうような気がします。今年も深まる秋にじっくり読みたい、秋におすすめの小説リストをご紹介したいと思います。

今回は秋のテーマを「青春の秋」「大人の秋」「情念の秋」の3つにしてみました。中身は文豪の伝統的な作品から、海外作品、若い世代向け、とさまざま。秋の夜長のお供にぜひどうぞ!

目次

青春の

『野菊の墓』 伊藤 佐千夫

『野菊の墓 』をお得に読む

旧十五歳の政夫と二つ年上の従姉民子との間に芽ばえた幼い清純な恋は、世間体を気にする大人たちのために隔てられ、少年は町の中学に行き、少女は心ならずも他に嫁いで間もなく病死してしまう。

「Amazon」商品紹介ページより

雑誌「ホトトギス」に伊藤佐千夫が発した処女作で、夏目漱石や斎藤茂吉ら当時の文化人に絶賛され一躍有名になりました。15歳の少年・斎藤政夫と2歳年上の従姉・戸村民子との淡い恋を描いたこの作品は、山口百恵主演でテレビドラマ化、松田聖子主演で映画化された、日本人にとっての永遠の名作。しかし、実際に読んだことがない方も多いのではないでしょうか?

今読むとさすがにちょっと古めかし過ぎるところはありますが、日本の山の秋と幼い恋の清々しい描写が印象に残る作品です。文章が読みづらいところもありますが、古風だけれどなめらかで淀みない文体は読んでいるうちにきっと癖になってきます。短編ですので是非原文でどうぞ。苦手な方は、電子書籍で現代語訳も出ているようですので、読み比べてみるといいかもしれませんね!

『野菊の墓』を読んだ後は、ぜひ、高村薫の『秋の花』もお試しを。前回の「秋のブックリスト」の記事に紹介しています。

現代語訳版はこちら

『ポプラの秋』 湯本 香樹実

『ポプラの秋』をお得に読む

父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親しくなると、おばあさんは私に不思議な秘密を話してくれた―。大人になった私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに蘇る。『夏の庭』の著者による、あたたかな再生の物語。

BOOK」データベースより

湯本香樹実さんは、このサイトの「夏のブックリスト」で紹介した『夏の庭』など、季節をテーマにした作品を書いていますね。こちらの『ポプラの秋』は、父親を亡くした少女の成長が描かれていて、夏や冬の季節も登場しますが、なんといっても印象的なのはタイトルの通りの秋の描写。アパートの庭にあるポプラの木がだんだん裸になっていき、おばあさんと落ち葉を掃いて、みんなで焼き芋を食べる、その心温まる描写が秀逸です。湯本香樹実さんの書く小説には、いつも「死」とどう向き合っていくか、という真摯な問いがあります。この小説は、暗い冬が待っていることを知っていてなお、心を寄せ合って温かさを感じる秋の切なさ、を感じさせてくれます。

大人の秋》

『熱い恋』 フランソワーズ・サガン

『熱い恋』をお得に読む

フランソワズ・サガン6作目の長編小説。裕福な中年パトロンに囲われている、《大人になるのを拒否する三十歳の年とった子供たち》リュシールとアントワーヌ。彼らはパトロンに付き添って参加する贅沢なパーティーの一つで出会い、運命的な恋に落ちる。隠れたあいびきで募る思いは抑えきれず、ついにはそれぞれのパトロンの庇護を脱して一緒に暮らすようになるが、現実の壁の前にあっけなく破れ去り、二人の恋は終わる。リュシールは、彼女を変わらず愛し続ける50歳の孤独で裕福な男性シャルルの元に戻っていく。

本サイト書評より

サガンびいきの私、前回の「秋のブックリスト」でも、パリと女の秋を感じさせる素敵な作品『ブラームスはお好き』を紹介しました。こちらの『熱い恋』はタイトル通り、春から夏にかけての燃え上がる恋がメインなのですが、そこから転げ落ちるように恋が冷めていく終盤の秋の描写が秀逸。熱い夏があってこその秋の情緒と切なさ、にぜひ浸ってください。『ブラームスはお好き』の美しいパリの秋とは違う、都会の秋の冷たさと侘しさが、身に染みる作品です。

書評記事はこちら

⒋『スナックちどり』よしもとばなな

『スナックちどり』をお得に読む

四十歳を目前にして離婚した「私」と、親代わりに育ててくれた祖父母を亡くしたばかりの、幼なじみで従妹のちどり。孤独を抱えた二人は、一緒にイギリスの西端の田舎町・ペンザンスに小旅行に出かける。淋しさを包みあう二人の間に、三日目の夜、ある「事件」が起きる…。日々を生きる喜びが心にしみわたる傑作小説。

「BOOK」データベースより

よしもとばななさんも、季節感を描写させたらピカイチの作家さんですよね。やはり、前回の「秋におすすめのブックリスト」で、『デッドエンドの思い出』を紹介しました。今回の作品は、アラフォーの従姉妹どうしが、イギリスに旅に出る、という話で、日本ではなくイギリスの片田舎ペンザンスの秋が味わえます。それぞれの土地の風土や気候をシンプルながらみずみずしい文章で表現してくれるのも、よしもとばななさんの魅力の一つ。異郷の秋を旅する感覚になれる素敵な小説です。

書評記事はこちら

情念の秋》

⒌『嵐が丘』エミリー・ブロンテ

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作者の故郷イギリス北部ヨークシャー州の荒涼たる自然を背景とした、二つの家族の三代にわたる愛憎の悲劇。主人公ヒースクリフの悪魔的な性格造形が圧倒的な迫力を持つ、ブロンテ姉妹のひとりエミリー(一八一八‐四八)の残した唯一の長篇。新訳。

英文学の不朽の名作。長い年月を扱った作品なので、秋の季節に限定した話ではもちろんありませんが、何といってもヨークシャーの荒涼としたヒースの丘のイメージは秋に読むのにぴったり。是非とも、荒々しく吹きすさぶ風とそれに煽られるような情念を感じながら、秋の夜長に味わってほしい、永遠の名作です。

『女系家族』 山崎 豊子

『女系家族』をお得に読む

大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。…遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。

山崎豊子さんの長編小説。三隈研次監督で映画化された他、何度もテレビドラマ化されている超人気作です。こちらも長編作で秋に限定された作品ではないのですが、秋のブックリストに取り上げたのは、物語の終盤で三姉妹が京都嵯峨野のお月見に出かけるシーンの迫力が圧巻だから。「阪神スノビズム文学散歩」の記事で、一部引用していますので興味がある方はどうぞ。因習と女のドロドロ、というのがこの作品の人気の秘密でしょうが、それが見事に昇華されている嵯峨野のお月見のシーン、是非とも深まる秋にご堪能あれ!

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