絵を見る楽しさ全開。読むたびに新しい発見があり、大人も一緒に楽しめる貴重なシリーズ。
<概要>
しっかりもので優しい犬のバムとわんぱく放題のカエルのケロちゃん。雨の日曜日に、バムがお部屋を片付けていると、泥んこビチャビチャのケロちゃんが入ってきて、おうちの中はめちゃめちゃ。お風呂に入ってスッキリした後は、どっさりのドーナッツをつくっておやつタイム。さて、バムがゆっくり読書しようと、屋根裏部屋に本を取りに行くとそこには・・・
<おすすめタイプ>
絵を見るだけなら1、2歳から、シリーズで楽しむには、3、4歳から上は大人まで
<おすすめポイント>
もうとにかく、これは絵をとことん楽しむ本です。バムとケロの素敵なおうちの中は、家具や食器に至るまで、細かい描写が行き届いていて、まず、それだけで楽しめます。バムとケロがつくる山もりドーナッツもたまらなく美味しそうで、これだけでつかみはオッケー。
ところがどっこい、この絵本の魅力はそれだけではありません。実は私、この絵本の評判が良かったので初めて買って読み聞かせた時には、ストーリーだけ注目していて、さほど良さがわからなかったんです。それから数年経って偶然また読んでいた時に、読み終わってから上の娘が「なんか、ここに変なのがずっといるんだよ!」と中の絵を指差してみて、初めて気づきました。バムをものすごく小さくしたような、ぬいぐるみのような妖精のような不思議な生き物。彼の名前は「ヤメピ」。でも、その名前は、作者島田ゆかさんのサイトを検索してわかったことで、実際には絵本のお話の中では、名前も会話も全く出てこない、ただ絵の中にひっそりと現れる謎の存在なのです。
それからはもう、「ヤメピ」の存在に釘付け。他にも、三本耳の兎のような謎の動物「おじぎちゃん」やピーナッツのきぐるみを着た「らくちゃん」など、謎の生き物がシリーズの絵本の各所に隠されています。シリーズを読んでいくと、お友達のアヒルの「かいちゃん」やケロのお気に入りのへびのぬいぐるみ「しましま」など、とにかく色んな隠れキャラの細かい仕掛けが無数に散りばめられているのです。微妙に、前作で登場したキャラクターやエピソードが繋がっていたりして、誇張ではなく、本当に読むたびに新しい発見があります。
「東大卒ママの子供に絵本をえらぶポイント4つを紹介」の記事で、まず「絵がおもしろい」ことを挙げ、《読み聞かせ中の幼児の視線を追っていると、聞いているストーリーとはほぼ関係なく、自分の興味のある絵を見ている時間がほとんど》だと書きました。私は自分が読書好きなので、ついつい絵本を文章やストーリーの観点から選んでしまいがちだったんですね。この『バムとケロ』のシリーズで初めて、心から「絵を楽しむ」ということを私自身が教えられたと思います。このシリーズの細かい仕掛けに気付いてからは、とにかく絵本を開いても子供たちは絵を見てばかり、正直「ストーリーとか頭に入ってるのかしら?」と思っていたんですが、後から話してみると、意外なことに、ストーリーだけでなく、バムやケロの性格とかまで、しっかり分かっているんです。子供たちが心からの興味を持って絵を向き合うことで、自然と絵本の中身は消化されていくんだなあ、と実感しました。
ということで、とにかくおすすめの絵本、特にシリーズで読むのがおすすめです。シリーズは順番に『バムとケロのにちようび』『バムとケロのそらのたび』『バムとケロのさむいあさ』、『バムとケロのおかいもの』『バムとケロのもりのこや』で、やはり順番に読むのがおすすめです。特に、最後の2冊『バムとケロのおかいもの』と『バムとケロのもりのこや』は、キャラクターが出揃ってから読んだ方が楽しいと思います。
隠れキャラの存在は絵本の中では全く言及されませんので、是非、作者島田ゆかさんのサイト『Bam Kero Page』を参照ください。シリーズで読む楽しみが広がります。
コメント