作家が書いた本の紹介本やエッセイ本は結構好きである。友達や知り合いに本を紹介してもらう時もそうだが、意外と、自分の趣味とは違う、普段では絶対選ばないような本について読んでみるのが実は面白かったりする。そういう意味で、私は普段純文学的なジャンルにいきやすいので、いかにも文学作家的な人の紹介本は余り意外性がなくて返って面白くない。(例:山田詠美、宮本輝など)今までで一番参考になって面白かったのは米原万理さんの『打ちのめされるほどすごい本』で、社会・政治に関わるノンフィクションものや評論などが多いのだが、試しに読んでみた本はどれも当たりだった。
本書は、本の紹介本というよりも、本に纏わる些細なエピソードの集大成、といった感じのエッセイなのだが、さすが、東大法学部出身で映画やちょっとサブカル的な文芸評論を得意とする異色の作家川本三郎氏、私の読書趣味とは全く異なる本ばかり取り上げられている。(ちなみに、川本三郎氏の本はたくさんあるが、『忘れられた美女たち』はマニアックなハリウッド黄金時代の美女たちのポートレートが絶妙に面白く、私のお気に入りの一冊である。)
まず、和英米を問わず現代のミステリーやサスペンスものなどを好んでいる川本氏だが、私がとにかく読まないジャンルがミステリーである。
それから、ヘミングウェイ、カポーティからブコウスキー、アプダイク、ブラッドベリなどのアメリカ現代文学。《アメリカ小説は、大草原が女のいない世界であるのと同様、女のいない小説なのである》という文芸評論家ジャック・カボーの言葉を引用しているのに大いに納得してまうのだが、このあたりも二冊以上読む気になれないジャンル。
日本の作家に到っても、昭和初期のマイナーな私小説作家とか、永井荷風あたりなど、絶妙に私のツボでないところを突いてくる。とても男らしい読書趣味というか、こうまで自分と正反対だと返って興味が湧いてきて面白い。
そんな川本三郎氏が珍しく取り上げている純文学的な作品、メイ・サートンの『独り居の日記』やデュ・ガールの『チボー家の人々』などを今読んでいるのだが、大当たりである。
やっぱり、たまには自分のテリトリーから出てみるのは良いものだ。こうなったら、永井荷風は勿論、敬遠しているミステリーものでも、逢坂剛と高村薫と宮部みゆきくらいは再挑戦してみようかな、などと夢は広がり、ただでさえいっぱいのAmazonのカートが100冊近くになってしまいそうである。
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