夏におすすめの小説厳選10選(2021年・最新版)夏は青春小説だけじゃない!大人向けの小説が読みたい人や海外小説好きな人にもおすすめ


目次

夏におすすめの小説10冊をご紹介

7月に入り梅雨が明ければいよいよ夏本番です。昨年も、「夏におすすめの小説厳選10選!村上春樹が好きな人も嫌いな人もこれならハズレなし(のはず)!?」で、夏におすすめの小説をご紹介しました。夏が近づくにつれ、こちらの記事のアクセスが増えているので、今年も夏のおすすめ小説をご紹介したいと思います。

夏の小説で同様の記事を検索すると、一夏の青春もの、といった作品が多いように感じますが、今年も、テーマ別に「青春の夏」に加えて、「ちょっと危険な夏」「大人の切ない夏」を感じられる小説もご紹介したいと思います。私の好きな海外文学作品も入っていますので、昨年のおすすめ10選に加えて、こちらも是非読んでみてくださいね!

  • 青春の夏
  • 危険な夏
  • 大人の切ない夏

中学生や高校生から読める・・・青春の夏

やっぱり王道の青春の夏。長い長い夏休み、忘れられない夏、大人の階段を一つ上った夏、、、子どもと大人の間、人生でたった一度の猶予期間のようなあの頃は、なぜかいつも夏の思い出と共によみがえります。

⒈『青い麦』シドニー・ガブリエル・コレット

「九月の太陽が若々しく澄んだ、黄色い光をそそぐ」ブルターニュの海岸。今年も、幼なじみのフィルとヴァンカは夏休みを過ごしにやって来た。そんな二人の前に魅惑的な中年女性が現れる。ヴァンカに恋しながらも、年上の女性に心ひかれるフィル。男と女の愛を追い求めたフランスの女流作家コレットが、性に目覚めた少年と少女の心の揺れを、情感豊かに描く青春小説。(Amazon 商品紹介ページより)

お馴染み、「夏の100冊」などでも定番の顔ぶれである名作です。コレットは、19世紀末生まれのフランスの女性作家。オードリー・ヘプバーンが抜擢された『ジジ』を始め、『シェリ』『牝猫』など多くの名作を残しました。女優としても活躍し、同性も対象とした華々しい恋愛遍歴でも有名だった彼女が描く大人の恋愛物語も素敵ですが、性の目覚めの多感な時期を描いたこの作品は、堀口大學の流麗な翻訳と共に日本でも大人気となりました。100年以上前に生まれた女性が書いたなんて信じられないくらい、みずみずしい感性で微妙な多感な時期も生き生きと描いています。

すももの夏』 ルーマー・ゴッデン

休暇に訪れたフランスで、母が入院し、子どもたちだけでホテル暮らしをすることになったイギリス人の私たち。背伸びをしたい年頃の私たちは、イギリスでは会ったこともない人々と過ごし、大人の世界の裏側をかいま見、とんでもない事件にまきこまれていく。作者ゴッデンの体験に基づいて書かれた、ロマンスとミステリーに彩られた初期の傑作。(Amazon 商品紹介ページより)

ルーマー・ゴッデンはイギリスの女性作家で、児童文学を多く手がけています。日本ではあまり知られていませんが、児童文学といってもちょっと影のある味わいのある作品が多く、大人が読んでも楽しめる作品が多いのが特徴。中でも、この『すももの夏』は、フランスの美しい自然とヴァカンス気分、思春期の子どもたちの微妙な心の綾、そしてミステリー仕立てのドキドキ感がバランス良く織り込まれていて、大好きな一冊です。

⒊『君の膵臓を食べたい住野よる

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!(Amazon 商品紹介ページより)

おフランスな夏が続いたので、最後は日本の「イマドキ」な青春夏物語を。映画化された話題作なのでご存知の方も多いと思います。本の表紙に桜が使われていたことから、春をイメージする方も多いようですが、メインのストーリーは夏を通してなので、夏に読むのがおすすめです!余命いくばくもない美少女との淡い恋、、、というと悲恋ストーリーのようですが、主人公たちのニヒルさと自虐ぶりにかなり笑わされます。コレットの『青い麦』と読み比べると、100年近く前のフランスと今の日本、若者たちの変わらない部分と変わっている部分が際立って、また違った面白さが味わえるかも。

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ミステリーやホラー・・・危険な

夏の暑さはしばしば人を狂わせる。真夏の夜の夢、で終われれば良いけれど、時には二度と帰って来れないような危険な淵に足を踏み外すことも、、、狂気と隣り合わせのうだるような暑さを感じたり、どこかヒヤッとしたものを感じたり、エアコンの効いた静かな部屋で、密かな自分だけの「危険な夏」を楽しむのもオツなものです。

新宿・夏の死』 船戸 与一

この街は何だってあり、さ。夏の暑さが人を変えるのか、あるいは街がそうさせるのか。陽炎揺らめくアスファルトには、死の匂いがする。放射する熱気、滾る情念―直木賞受賞後初の小説集。(Amazon 商品紹介ページより)

船戸与一さんは、有名な漫画『ゴルゴ13』の原作者としても有名なハードボイルド作家。1990年代に連載されたこの短編小説集は、全て新宿を舞台にしています。90年代の新宿はかなりのダークサイド。外国人の密売組織、オカマ、ヤクザ、売春、詐欺、ホームレス、、、全編、死と暴力の匂いに彩られた、真夏の都会の狂気を感じられる一冊です。ただハードボイルドなだけでなく、どこか物悲しさや人情味が滲み出ているところが、船戸与一さんの作品の醍醐味。こんな暑苦しい時に、、、と言わず、是非とも暑苦しい夏にこそ読んでみてください(笑)

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ハローサマー、グッドバイ』 マイクル・コーニイ


夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版

こちらも、タイトルにサマーとある通り、夏の小説としてよく紹介される本です。イギリスのSF作家マイクル・コーニイの代表作。主人公が14歳の少年なので青春恋愛もの、として扱われますが、ただの青春ものではなく、戦争や階級社会的なテーマも隠されたディストピア的小説で、大人が読んでも面白い深みがあります。地球とは違う風土でありながら、海辺の町で少年少女が過ごす一夏の風景は、どことなくノスタルジックでもあり、読んでいてとても不思議な感覚。ただし、ほろ苦い青春ノスタルジーを楽しむのは途中まで、最後にはかなり終末感の高いダークな物語になりますので、その急展開もお楽しみに。SFとか普段あまり読まないけど(私です)という方こそ、夏季休暇に是非試してみて欲しい一冊です。

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夏に抱かれて』 フランソワズ・サガン

1942年のあの夏は、この世で最も輝いた美しい季節だった。ドイツ軍の占領間近いフランスの東南部ドーフィネ地方に住む実業家シャルルの元に、幼友達のジェロームが愛人アリスを連れて訪れた。二人はレジスタンスのために心優しい男の館を利用しようとした。しかしジェロームを苦悩させる激しい愛の嵐がシャルルとアリスを襲う…ひと夏の大人の愛の優しさと哀しみを描く長編小説。(文庫表紙解説より)

サガンは昨年度の夏の小説おすすめ10選の記事でも、デビュー作『悲しみよこんにちは』を紹介しました。『悲しみよこんにちは』が、若者の夏なら、こちらは大人の夏。都会の洒脱な恋を描いたサガンには珍しく、田園地帯を舞台とし、戦争の影が色濃く出たちょっと暗めの物語ですが、田舎の自然の描写も素晴らしく、どこかサスペンスめいたところも楽しめる、夏にはぴったりの一冊です。

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人気小説家の作品や夏の表現が秀逸な作品・・・大人の切ない夏

大人になってからも、特別な夏は来る。むしろ、大人になったからこそ、忘れられない夏がある。大人の忘れられない夏は、どこか切なく物悲しいものです。

なんくるない』 よしもとばなな

沖縄には、神様が静かに降りてくる場所がある―。心ここにあらずの母。不慮の事故で逝った忘れえぬ人。離婚の傷がいえない私。野生の少女に翻弄される僕。沖縄のきらめく光と波音が、心に刻まれたつらい思い出を、やさしく削りとっていく…。なんてことないよ。どうにかなるさ。人が、言葉が、光景が、声ならぬ声をかけてくる。なにかに感謝したくなる滋味深い四つの物語の贈り物。(Amazon 商品紹介ページより)

沖縄を舞台とした短編集です。とにかく沖縄の風土と情緒にどっぷりと浸れるので、夏にはぴったり。よしもとばななさんらしい、どこかスピリチュアルなものを感じさせる、繊細さと温かみの混じった物語と文章が楽しめます。

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マリコマリキータ』 池澤夏樹

南の島で出会った、自由で奔放なマリコ。日本を抜け出し、風のように島々を渡って生きていく彼女を、僕は追いかけることができるのか?(「マリコ/マリキータ」)。前人未踏の遺跡を探検し、「神」と遭遇してしまった男達の至福と錯乱を静謐に描き出す(「帰ってきた男」)。瑞々しい珠玉の5篇を収録した、池澤夏樹の最初の短篇集。(Amazon 商品紹介ページより)

池澤夏樹さんの処女短編集。私は池澤夏樹さんの大ファンで、彼の著作だけでなく編集している文学全集も密かに集めています。今までの記事で何度も主張している通り、小説では長編よりも短編の方が絶対的におすすめ!短編こそ、池澤夏樹さんの詩人らしい文章と感性が生きてきます。こちらの『マリコ、マリキータ』の表題作はグアムを舞台、他に沖縄を舞台にした作品も収録されていて、夏に読むにはおすすめの短編集。よしもとばななさんとはまた一味違うスピリチュアル感、硬質さと滑らかさが絶妙にミックスされた詩的な文章、池澤夏樹さんの真骨頂を味わえる一冊でもあります。

引用集はこちら

風の家』 森瑤子

友人の妻と恋におちた男は、妻子を捨て、東京から3700キロの南の蒼い島へ逃げた。あなただけを待っている、と女に言って…女は退屈な夫と、幼い息子を振りきって後を追った。だが、それはひとつの地獄から、もうひとつ別の地獄へ移るだけのことだった―社会も家庭も捨てた男と女の荒れはてた愛の極限を描く。(Amazon 商品紹介ページより)

大人の恋愛、と言えば、個人的に森瑤子さんの作品は外せません。『風の家』は、不倫の恋の末、それぞれお互いの家庭を捨てて誰も知らない遠い南の島まで駆け落ちしてきた男と女の物語。ロマンチックな南の島での逃避行のはずが、現実はまた別の牢獄のような生活が二人を待ち受けている。男と女の繊細な感情の動きと、南の島のリアルな情景と、どちらの描写も味わえる大人の夏物語です。

なかなか暮れない夏の夕暮れ』江國香織

「人生」と「読書」が織りなす幸福なとき。本ばかり読んでいる稔、姉の雀、元恋人の渚、娘の波十、友だちの大竹と淳子……切実で愛しい小さな冒険の日々と、頁をめくる官能を描き切る、待望の長篇小説。(Amazon 商品紹介ページより)

江國香織さんも、サガンと同じように昨年度の記事『すいかの匂い』をご紹介しましたが、今度は大人の長編作品を。タイトル通り「なかなか暮れない」感じで過ぎていく、どこかとぼけた大人たちのひと夏を描いた物語で、ゆるゆるとした夏の読書に最適。なんといっても、小説に出てくる食べ物がどれも美味しそう!夏バテ気味で食欲がない時にもぴったりな一冊です。

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以上、今年も夏におすすめの厳選小説10冊をご紹介しました!結構、自分の中でもバラエティ豊かなセレクトになっているのではないかと自負しております(笑)。他にも夏の小説でこれは外せない!というものがありましたら、是非、インスタグラムやコメント欄で教えてください。

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