レビュー・映画 『恋愛適齢期』


2004年公開アメリカ映画。主演はジャック・ニコルソンとダイアン・キートン。監督・脚本は、『ホリディ』『花嫁はパパ』など数々のコメディヒット作を生んだナンシー・マイヤーズ。アメリカのロングアイランドやその東端に位置するハンプトンズの雰囲気が好きで、そこを舞台にした海外ドラマや映画をよく観ている。ロングアイランドやハンプトンズについてはまたいつか別に記事にしてみたいと思っているが、この映画も、全米屈指の高級別荘地ハンプトン・ビーチが舞台となっている。

ということで、インテリアやロケーション重視で観始めた映画だったのだが、期待してたより良かった。なんと言っても、主演の2人が上手い。アダルト中のアダルト、還暦近いシニア世代の恋愛物語なので、一歩間違えたら醜悪なコメディになってしまいそうだが、そこはさすがの名優2人である。ナンシー・マイヤーズは『ホリディ』など、ラブ・コメディはちょっと甘過ぎるところもあるが、暖かみのあるユーモアがある作品が多く、何というか、80年代良きアメリカ映画の名残があって好きである。

ジャック・ニコルソンがアクが強過ぎるので、共演者はいつも難しいだろうなあと思うが、ダイアン・キートンが爽やかなのに男優に負けないインパクトがあってさすが。なんでも、ナンシー・マイヤーズが脚本を手がけるにあたって、ダイアン・キートンが演じることを前提に書いたと言われているから、さもありなん。興業的にも大ヒット作で、ダイアン・キートンは本作でアカデミー主演女優賞にもノミネートされたが、まさに、彼女抜きでは成立し得ない作品である。彼女が演じる有名劇作家エリカのシンプルなファッションも素敵だし、60近くで本気で恋愛してしまって手放しで怒ったり泣いたりしてしまう弱さも、失恋をバネに仕事のネタにしてしまうバイタリティもどちらも素敵である。60歳でこんなチャーミングな女性を演じられるとは、同じ女として爪の垢だけでも煎じて飲みたいくらいだ。

脇役にこだわったのもいい。日本では大人気の男優キアヌ・リーブスを、最後まで報われないフラレ男に抜擢しているのも強気で好きだし、ダイアン・キートン演じる主役エリカの妹というチョイ役に、『ファーゴ』でアカデミー賞を受賞している名優フランシス・マクドーマンドという豪華さ。

豪華なキャストに、贅沢で素敵過ぎるハンプトンの別荘やビーチといったロケーションとくれば、ヒットの定番なのだが、そこに超アダルトな軽い恋愛コメディというのを持ってきたのがハリウッドのニクいところで、こういうセンスは日本映画にも見習ってほしいところではある。(これが、キアヌ・リーブスとキャメロン・ディアスの恋愛とかだったら全く観る気がしない)

ちなみに邦題はあんまりイケてないと思うのだが、英語の原題は『Something’s Gotta Give』。「何か与えなくちゃいけない」という意味から、妥協という意味を読み取る人もいるようだが、歳を重ねた恋愛には妥協というよりは代償、という方がピッタリくるかもしれない。でも、代償というのは重たくて嫌な意味だけ持つのではない。代償が、人生をより美しく豊かにしてくれることもある。観た後に、そんな前向きなメッセージが残る映画だった。

Follow me!


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。