『太陽の塔』 森見登美彦


たまには知らない現代作家ものも読んでみようと思い、1979年生まれという私よりも年下の若手作家、森見登美彦という人の作品を読んでみた。本作はファンタジーノベル大賞を受賞した作品。
端的に言って、深みは無いけれど、なかなか面白いし、青春時代をありのままに描く、という点で、結構楽しめる作品だった。

主人公は、京大5回生の、超オタクでむさくるしい、もてない男くん。冒頭の文章
「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。」
という言葉が示す通り、完全に勘違いの自信を身にまとって、どうしても自分とズレてしまう世の中から必死に身を守っている。自信があるように見えて実は自信が無い。なので、同じクラスの女の子の視線に震えるほど怯え、鴨川の川岸に並ぶ男女のカップルに必要以上の憎悪を燃やし、そして同じく実は繊細な心を隠し持ったむさくるしいオタクの同類友達3人とだけつるんでいるという毎日。一年前にちょっとだけ付き合い、浮かれまくった挙句にあっさりふられてしまった彼女のことを、「研究対象」としてつけ回し、あくまで純粋な学問的探究心に従っているまでで、自分は断じてストーカーなどではない、と思っている、かなりギリギリの主人公なのであった。

この本の面白さは、そういうインテリオタクくんたちの馬鹿馬鹿しい勘違いっぷりと、やはりそういう人たちにありがちな、主人公の語り口にある。
少し気をゆるしたすきに宿敵に懐に飛び込まれたも同然であり、私は慄然とせざるを得なかった。街を怪物が闊歩している・・・クリスマスという怪物が・・・、思わず私は呟いた。田中神社の祭神、大国主命も、ここまでクリスマスの侵入を許してしまわれたことを、どれほど無念に思われていることであろうか。四条河原町界隈ではとっくにクリスマスファシズムの嵐が吹き荒れていることは私にもよく分かっている。だからこそ私は、十二月以降に四条河原町には足を踏み入れないことにしている。しかしまさか敵の魔手が、ここ東大路通りにまで及んでいるとは思っていなかった。・・・
とまあ、こういう、くだらないことを難しい言葉や論文口調で語る感じが延々と続くわけである。

私が卒業した高校や大学には、こういうタイプの男の子たちが、一定割合必ずいたので・・・ちょっとやりすぎ感はあるにしても、「わかるな~」という感じ。ほんとにこういう喋り方する人たちがいるしね・・・

ちなみに、主人公の「研究対象」であり元カノである水尾さんは、万博公園の「太陽の塔」に夢中になり、「もし私がペアルックをしたがったら、殴り倒してでも止めてください」と言い、誕生日に「人間臨終図巻」をくれたりする、かなりの「不思議ちゃん」キャラで、こういう女の子も、私の通っていた学校には多かったような気がする・・・
ストーリーは、もてない男がじたばたして、同じように彼女をつけ回すストーカー男がでてきたりしてあーだこーだして、あまり必然性の無いファンタジーがちょっぴり混じって、そして、最後に
「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。
そして、まあ、おそらく私も間違っている。」
というオチ。

遊んでばかりいた子、勉強ばかりしていた子、マセガキだった子、オタクだった子、、、とにもかくにも、青春時代というのは、所詮こういうことだよね、、、、、と、シンプル&ストレートなこの作品を読んで、妙に納得してしまったのであった。

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