書評・小説 『初夜』 イアン・マキューアン


英ブッカー賞受賞作家イアン・マキューアンの中篇小説。

まだ「貞節」ということが社会的に大きな意味を持っていた1960年代初頭の英国で、文字通り結婚式を挙げたばかりの新婚カップルの「初夜」を、綿密な繊細な筆致で綴った作品。

小説には、ディティールとストーリーテリングが重要だと思っているが(それが全てではないが)、そういう意味での小説の醍醐味を堪能できる珠玉の作品だった。新婚初夜ということを題材に、これだけ緊張感のある、でも完成された綿密なストーリーテリングを展開できるとは、さすが贖罪のような重厚な長編作品を書くことのできる作家の力量を思い知らされる感じ。

イアン・マキューアンは、映画化もされた代表作贖罪を読んで以来、気になっていた作家だが、この作品でさらに好きになった。ここ近年では、やはり映画化された作品でブッカー賞受賞者であるマイケル・オンダーチェを知ったことが、私にとって大きな収穫だったが、イアン・マキューアンもオンダーチェに続いて、次回作が楽しみな現代作家になりそうだ。

「英国には詩はあるが文学は無い」という批評を何かで読んだことがあるが、英文学小説というのはどこか日本文学小説に似ているような気がする。軽やかさ、日本で言えば「情緒」と呼ばれるような独特の価値観・世界観、内向的でどこかこざっぱりと纏まっているような感じ・・・フランス文学やロシア文学のような重厚さやぎりぎりと迫る感じには欠けるかもしれないが、これはこれで私は好きだ。

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