【書評】【小説】 『あの家に暮らす四人の女』 三浦 しをん


またまた三浦しをんである。instagramで度々投稿されていて気になっていた。テレビを全く見ない私は、読んでググッてから知ったのだが、ドラマ化もされる話題作らしい。

「ねえ、気づいてる?」「私たち、『細雪』に出てくる四姉妹と同じ名前なんだよ」

と、主人公の佐知が言う通り、これは三浦しをん流現代版細雪らしい。杉並区の古い古い洋館に住む、鶴代とそのアラフォー未婚娘佐知、その友人の雪乃と多恵美の4人の女性。さすがにあんな耽美的ではないが、世知辛い現代から見ればそれなりに優雅で快適な生活を送る女だけの楽園生活、まあ、ある種のおとぎ話であり、リアリティはない。著者ももちろんそんなものを求めているわけではないだろう。

大体、女のグループがこんなにきれいさっぱりと仲良く暮らしていけるはずもなく、特にアラフォー手前の未婚女性3人にいたっては、絶対にこんなにお互いにサッパリとしてはいられないものである。現実には、ダメ男の元彼に中途半端なストーキングされながらも新しい恋のチャンスは逃さないちゃっかり者の多恵美に対し、男っ気の全くない他の2人が陰口をたたいて意気投合したりしてドロドロするに決まっている。

そんな意地悪な分析しかできない残念な私だが、まあ、そんな意地悪な気分も吹っ飛ばす勢いで面白いのが、主人公の母鶴代である。三浦しをんは、30,40代の女性達のリアリティには余り迫っていないが、オバハンまたはオカンという属性にはいかんなくその鋭い観察眼を発揮していると思う。三浦しをんの作品は、大体ニヤニヤして読んでしまうのだが、この作品にいたっては、声をあげて笑ってしまうこともあった。そのくらい、永遠の家付き娘、齢70近くの鶴代のキャラは強烈である。本家『細雪』の長女はいてもいなくてもいいような感じだが、こちらの鶴は違う。

読んで為になるとか世界に引き込まれるとかではないけれど、読んで時間を無駄にしたとは決して思わない。三浦しをんは相変わらず私にとって、安定感のある貴重な現代作家である。

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