1933年公開アメリカ映画。グレタ・ガルボ主演。監督は、『喝采』『恋の凱歌』『虚栄の市』などで有名なルーベン・マムーリアン。
『ヨーロッパのサロン 消滅した女性文化の頂点』を読んで、クリスティーナ女王に興味をもち、なんとなくこの映画を観てみた。若干6歳にしてスウェーデン国王に即位、8歳で8ヶ国語を操り、ラテン語で議論もできたという。30歳前に退位し、パリやローマでサロンを展開し、コスモポリタンな人生を送った。
映画では、クリスティーナ女王はただのシンボリックな存在にされていて、退位の理由も、魅力的なスペイン大使との恋を成就させるため、と史実とは全く異なる物語になっている。まあ、ハリウッド映画にそんなものを期待してはいけないのだが、これは実際のクリスティーナ女王の姿とは全く関係無く、徹頭徹尾、グレタ・ガルボの姿を楽しむ映画である。
グレタ・ガルボというと哀愁漂う役やニヒルな役が似合う感じだが、この『クリスチナ女王』は、溌剌とした若々しい表情や役どころが楽しめるの。実際のクリスティーナ女王は色黒で無骨で男のような見た目だったらしいが、身分を隠して男のフリをした女王が上着をはだけてみせるシーンの、ガルボの身体つきと言ったら、負けず劣らず色気がない。そんな女優が、『肉体と悪魔』や『椿姫』であたりをとるのだから、当時のフィルムの中の女優像って面白いなあ、とも思う。
この年、アカデミー作品賞を受賞した大ヒット作『グランド・ホテル』公開の翌年で、ガルボは28歳。トーキー映画に変わってから、まさにハリウッドのトップ女優として認められた絶頂期始まりの頃である。映画も、とにかく、グレタ・ガルボを見れれば良い、という感じ。サイレント映画や舞台演劇の名残ある、ガルボの芝居がかった演技や表情のクローズアップ。まあ、ハリウッドのクラシック映画って、そういう古典芸能的お約束感があって、それはそれでなんだか観ている方も心安いのである。
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