数年前に話題になっていたこの本。自分時間ゼロとなる子供たちの長期休暇に阻まれながら、読了するのに何ヶ月かかったかは内緒です(笑)
高校時代は数学の赤点記録絶賛更新中だった私が果たして読めるのか!?と思っていたら、数学は殆ど必要のない内容で、とても読みやすくて面白かった。
本書の要点をものすごくざっくり言うと、(ざっくり過ぎますが)
①資本収益率(=r)が経済成長率(=g)より高い場合には、もともと資本をもつ者が有利になり格差が拡大する
②人類の歴史の大半はr>gとなっている
③非常に長い歴史で見ると、gというのはそこまで高くない。二度の世界大戦後の復興期間は異常値であり、この期間を前提に平等化が進んでいると考えてはならない
特に重要なのは、③の点で、二度の世界大戦がどれほど、富の若返りや平等化をもたらしたか、逆に、その大戦直前には(特に第一次世界大戦前の西欧)格差が激しかったか、ということを非常に長いスパンでの統計データを集めて検証している。
たしかに長いことrがgよりも大きかったというのは、論争の余地のない歴史的現実だ。多くの人は最初にこの主張に直面した時、そんなはずはないと言って、驚きと戸惑いを露わにする。(P368)
言い換えれば、今日富が過去ほどは不平等に分配されていない理由は、単に1945年以降まだ十分に時間が経っていないからだ。(P387)
戦争はすべてのカウンターをゼロ、あるいはゼロ近くにリセットし、必然的に富の若返りをもたらした。この意味で、20世紀にすべてを水に流し、資本主義を超克したという幻想を生み出したのは、まさに二度の世界大戦だった。(P412)
これらが今まで見過ごされていた理由として、一番大きいのは2回の大戦のインパクトということであろうが、もう一つ挙げられている理由として、米国での移民流入による人口動態の特殊性がある。過去200年間のアメリカにおける急激な人口増による順調な経済成長率(=g)を、各国にあてはめて或いは世界経済全体に敷衍して考えることは無論できない。こちらも、新興国の経済成長問題や移民問題を含めて、今後の世界経済を考える上で非常に重要な点である。
人口が100倍増した国と、2倍になっただけの国とでは、格差の力学と構造はまったくちがったものになる。特に前者では後者に比べ、相続の要素はずっと重要性が下がる。・・・これはまたある意味で、米国の事例は一般化できないということだ。(というのも世界の人口が今後2世紀で100倍増するとは考えにくいからだ)(P32)
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