『21世紀の資本』トマ・ピケティ ②


その前提に基づき、現在、再び大戦前に近い水準で格差拡大が進行していること、これらの問題に対処するために、国際的な枠組みでの資産税を導入する提案や、タックスヘイブンにより多大な資産、所得隠しが見逃されている問題などにも触れている。

私が経済や資本主義について勉強し続けている理由の一つに、「資本主義には自動的に格差拡大するプロセスが内在していているのではないか」という問題意識がある。自分の中にある問いとしては、ほかに、「複利ということの反自然性」とか「資本主義の経済発展の裏には、常に外部依存・寄生するシステムがあるのではないか」とかいくつかあるわけだが、中でも1番目の問題は、色々な書籍の中でも割と明快な答えが出てきやすいものである。

本書の中での例を挙げてみると

もしも差rーgがある閾値を超えると、もはや分配は均衡しない。富の格差はかぎりなく増大し、分配の最高値と平均値の差は無限に大きくなる。もちろん、この閾値の正確な水準は貯蓄行動次第だ。とても裕福な人々にお金の使い道がなく資本ストックとして貯蓄しそれを増やす以外に選択肢がなければ、格差の拡大はもっと起こりやすくなる。(P381)

ある閾値を超えると、資本は自己再生産して指数関数的に蓄積する傾向がある(P410)

複利の法則を考えると、非常に急速な格差拡大がこのメカニズムで引き起こされるのも明白だ。・・・不均等な資本収益率は不等式r >gの影響を大きく増幅し、悪化させる格差拡大の力なのだ。(P447)

不等式r >gに、初期資本に比例した資本収益率の格差が加わると、過剰で持続的な資本集中がもたらされる。いかに当初の富の格差が正当なものだろうと、そうした財産はあらゆるまともな限界も、社会的効用で見たどんな合理的な正当化も超えて、自律的に増加し、存続してしまうのだ。(P460)

P381の指摘については、中高齢者が資本の多くを握っている高齢化社会にも当てはめることができるだろう。

さらに、本書で印象的だったのは、文学についての引用や言及がとても多かった点だ。19世紀初めの西欧の様子を伝えるために、バルザックやオースティンの作品を引用していた。先日記事にした『マネーの進化史』もそうなのだが、読みやすくて面白い社会史や経済史の本というのは、文学や映画などの引用が多い。第一次世界大戦前ヨーロッパのグローバル資本主義格差社会の様子は、現代の我々に非常に共感と示唆を与えてくれるものである。そういう直感は、文学や映画などの芸術作品から得やすいものだと思う。

言い方が難しいのだが、文学に通じた作者は、文章力や表現力が豊かであるという面もあるだろうが、それ以上に、データ分析や史実の研究の中に、独自のコンセプトや思想を生み出す発想力にも繋がっているのではないかと思う。そうやって、文系不要論に一石を投じてみたい、超文系の感想でした(笑)

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