書評・小説 『阪急電車』 有川 浩


小川洋子『ミーナの行進』の芦屋に引き続き、阪神間エリアを舞台にしたこちらの小説を読んでみた。阪急電車の中でもちょっとマニアなローカル線、宝塚駅と西宮北口駅を繋ぐ「今津線」が主人公だ。

著者が実際に今津沿線に住んでいたからこそ書いた小説なのだろうが、宝塚から西宮、ハイソな住宅街から落ち着いた下町まで、色々な顔をもつエリアの魅力がよく出ている。学生や社会人など、若い人がメインの登場人物だが、ちょっと歳のいった奥様達も重要な役柄を演じている。廃れた駅前ながら格式高い宝塚ホテルがある宝塚南口駅、ローカルな落ち着いた佇まいの小林駅、関西学院大学キャンパスのある甲東園駅、地元人に「厄神さん」と親しまれる門戸厄神駅、、、、、

有川浩は、ライトノベル系の作品が多く、私はこれ以外読んだことはないのだが、若い人にはかなり人気の作家さんのようで、この小説も2011年に映画化されている。物語自体は軽いものだが、なんと言っても構成が面白い。今津線の一方の終点、宝塚駅から始まって、もう一方の終点西宮北口駅まで、一つ一つの駅を順に辿りながら、主人公が章ごとに変わるショートストーリーが展開されていく。それくらいのオムニバス形式ならよくありそうだが、物語の登場人物たちが微妙に重複していて、話が繋がっている上に、物語の半分で電車が折り返しになって、今来た駅を反対の順番で辿りながら、前半戦で出てきた登場人物やエピソードが反復されながら拡張されていく。その感じが、実際にゆっくりローカル線を往復している感じに実によく似ているのだ。

今津線エリアに住む、まだ世間のしがらみも荒波にも本気で曝されたことのない一大学生になって、まったりほっこりと、ローカル電車に揺られているような感じを味わえる、そんな作品である。





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